■書名:腰痛のない身体介助術
■著者:岡田慎一郎
■発行元:医学書院
■発行年月:2013年9月1日
>>『腰痛のない身体介助術』の購入はこちら
55のヒントを参考に、腰痛を起こさない身体介助術を身につけよう!
介護職の職業病といえば、「腰痛」と答える人が多いのではないだろうか。腰の負担が大きい移乗の介助に不安を感じていたり、実際に腰痛に悩んでいる人も少なくないだろう。本書では、そのリスクを減らすヒントが示されている。
著書の岡田慎一郎さんは、序文でこう読者にメッセージを送る。
<本書は「身体介助は腰を痛める」という常識を疑い、むしろ身体介助をやればやるほど、身体の使い方がうまくなり、腰痛がなくなる方法やヒントを提案したいと思います。これはささやかな、しかし挑戦的な試みです>
著者がすすめるのは、「骨盤ポジションをコントロールする」「体幹をニュートラルポジションに保つ」「全身の運動性を高める」というシンプルな3つの原則。この3つを押さえることで、腰痛を起こすことなく、自然で無理のない身体介助を行うことができると言う。
そのうえで、医療や介護の現場で日常的に直面するシーン別に、55のヒントが紹介されている。シーンは、「体位変換」「ベッド上での並行移動」「ベッド上方への移動」「起きる・寝る」「立つ・座る・歩く」「車椅子の介助」「床上での介助」という7つ。特に介護初心者にとっては苦手とする場面ばかりだろう。
300点以上のカラー写真とイラストを使って、それぞれの動きをコマ送りのように解説してくれるので、非常にわかりやすいのが特長。介助者の体の使い方、重心の位置、腕の使い方などのポイントが視覚的に理解できるように工夫されているので、写真を見ながら実際に体を動かし、すぐに実践に活かすことができる。腰痛のリスクをなくすというだけでなく、仕事をスムーズに行うという面からも、本書のヒントは役に立つ。
職場の研修などで教わって知っている、すでに実行している、という内容もあるかもしれない。しかし、意外と「どうしてそうするのか」を知らないまま行っている人も多いのではないだろうか。本書では、関節のしくみやテコの原理、骨盤の位置などをイラストで解説しつつ、無理のない動作の“理由”を教えてくれる。これなら、納得してコツをつかむことができそうだ。
実際の現場では、毎回シチュエーションは変わるだろう。本書の内容と同じにはできないかもしれない。その際にも、3つの原則をしっかり頭に入れておくことで、応用が利くのではないだろうか。
せっかくやりがいを持って取り組んでいる介護の仕事が、腰痛のために思うようにできなかったり、不安になったりするのは非常に残念なこと。本書を参考に、自分の介助術を見直してみるいい機会となりそうだ。
<小田>
著者プロフィール
岡田慎一郎(おかだ・しんいちろう)さん
理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。重度障害者施設や高齢者施設に約10年間勤務。独自の身体介助法を模索するなかで武術研究科の甲野善紀氏と出会い、古武術の身体運用や発想にヒントを得た「古武術介護」を提唱。現在は、講演、執筆、企業アドバイザーなど幅広い活動を行っている。『古武術介護入門』『家族のための介護入門』など著書多数。