■書名:対人援助職に効く ストレスマネジメント ちょっとしたコツでココロを軽くする10のヒント
■著者:竹田 伸也
■発行元:中央法規
■発行年月:2014年12月15日
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介護職が抱えやすいストレスのからくりと解決法を実話で解説
介護や医療、福祉の現場で働いている人には、利用者や職場の人間関係、仕事の進め方などにつまづき、悩む人が多い。人と向き合う仕事だからこそ、ストレスを抱えやすいのかもしれない。みなさんは、以下のような悩みを持ってはいないだろうか。
・失敗を引きずって自信が持てない
・言いたいことがうまく言えない
・利用者の意欲を引き出せない
・利用者に苦手意識をもって困っている
・職場での人間関係が築けない
・疲れが取れない、眠れない
本書は、介護職をはじめとする “人を援助する仕事” に就いている人々に向けた、ストレスとの付き合い方を指南する入門書だ。
今の悩みに対して、どのような解決法があるのか提案するのではなく、「悩みが発生するからくり」にまでさかのぼって解説している。どんな悩みにも必ずそれを引き起こす要因がある。原因を理解し、問題への向き合い方を少し変えるだけで、これまでの悪循環を断ち切っていく、というわけだ。
例えば、「失敗を引きずり、支援者としての自分に自信が持てない」場合はどうだろうか。著者の竹田さんによると、いつまでも失敗を引きずってしまうのは「考え方のクセ」に原因があるのだという。
<失敗を引きずらないで自信を育む秘訣は、失敗をしないようにスキルを高めたり、成果を上げて成功体験をひたすら積むことではありません。失敗を引きずって自信をなくしてしまうような考えと距離をとることができればよいのです>
本書では、「うまく支援ができない」というマイナス思考をプラス思考に変えよう!と説いてはいない。「プラス思考に変えなくてはならない」という考えが、かえって自分を苦しめてしまうからだ。あくまでもマイナス思考と距離をとることが大事だ、として、嫌な考えを止めるステップ、マイナス思考に客観的な光を当ててその矛盾点を探す方法などを紹介している。
本書では、身近な「悩み」の実話を10個紹介。
特徴的なのは、自分を楽にする「セルフケア力(りょく)」だけではなく、利用者への支援を良くする「援助技術力」も身につくようになっていることだ。利用者に対する援助技術力が高まることで、開放されるストレスもたくさんある。
<ストレスから回復するにはどうすればよいか。その答えは、実はすでにあなたのなかにあります。この本の目的は、あなたのなかにある「問題を解決する力」を引き出すことです。「自分にそんな力がないから、悩んでいるのに」と思う人もいるでしょう。でも、それは、困った状況に陥ったときにどうやって自分の力を引き出せばよいかを、ただ知らなかっただけです。>
全体を通して優しく語りかけてくる文章。励まし、鼓舞してやる気を引き出すというのではなく、悩みに寄り添い一緒に問題を解決していこうという意識が感じられる。紹介している実例も具体的で共感できる人も多いのではないだろうか。
<松原圭子>
著者プロフィール
竹田 伸也(たけだ・しんや)さん
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻講師。博士(医学)。鳥取大学大学院医学系研究科医学専攻博士課程修了。鳥取生協病院臨床心理士、広島国際大学心理科学部講師を経て現職。日本老年精神医学会評議員、日本認知症予防学会評議員を務める。