■書名:いのちをつなぐ 看取り援助 ~特養の介護を支える経営と看護から~
■著者:小川利久/小林悦子
■発行元:エイデル研究所
■発行年月:2013年1月15日
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尊厳ある最期のための「看取り援助」を考える
本書は、東京都足立区にあるユニット型特別養護老人ホームの「看取り援助」をまとめた1冊。
「看取り援助」とは、入居者が医師の診察により、医学的に回復の見込みがないと診断された場合に行われる援助のこと。延命のために様々な医療処置を施すことはない。
入居者が住みなれた施設の中で、普段通りの生活をしながら尊厳ある最期を迎える。そのために、介護職員をはじめ施設のスタッフ全員が一丸となって援助を行っていくのだ。
本書では、看取り援助で安らかに「死」を迎えた利用者のケースを紹介している。
看取り援助を選んだ利用者の年齢や病歴、施設を訪れた経緯などは様々。しかし共通しているのは
「自然に死を迎え入れたい」ということ。
最後は刻々と変化する体の症状はそのままに、いのちの火が静かに消えていくのを受け入れる。家族が手を握りながら、体をさすりながら、職員たちに見守られながら。
もちろん、こうした看取り援助は、綿密な看取り援助計画を作成した上だからこそできること。本書では看取り援助計画や看護記録も紹介している。
ひとつの看取り援助の事例に対し、介護職員や看護師、医師、家族からの意見なども盛り込んでいるのも本書の特徴だ。老人ホームで働く介護職員にとっては、看取り援助に取り組む際の、他職種の仕事内容・家族の思いなどもわかり、手助けになりそうな一冊だ。
看取り援助を受け入れた中での不安、看取り援助を開始する時期についての悩み、家族間の情報共有の難しさといった、家族や介護職員が直面した点についても、細かく綴られている。中には、見送りに携わった葬儀社スタッフが感じたリアルな声なども掲載されている。
また、特養で看取り援助体制が定着しない理由など、今後の課題についても書かれており、多角的な視点で読みすすむことができる。
<私たちの行っている「看取り援助」とは、「死に向かう人生最後の生き方の援助」という意味を込めているのです>
本書では看取り援助のほか、超高齢化社会における、特別養護老人ホームの役割についても言及している。看取り援助はもちろん、特養について知りたい人にも参考になる内容だ。
<松原圭子>
著者プロフィール
小川利久(おがわ・としひさ)さん
大手ゼネコンにて住宅販売・企画、有料老人ホーム・シニア住宅の事業企画等を行い、民間企業創生期の有料老人ホームを立ち上げ。その後、民間シンクタンクにてシルバー事業等の企画やコンサル業務を経験し、2001年社会福祉法人の事務局長に就任。個室ユニット型のモデル的事業として特別養護老人ホームを立ち上げる。2006年に本書の舞台となる東京都内の特養を立ち上げ、施設長を8年間務める。現在はエイジング・サポート実践研究会 代表。東北大学 スマート・エイジング・カレッジ東京事務局長、NPOエイジング社会研究センター理事、一般社団法人日本ウエルエージング協会理事。
小林悦子(こばやし・えつこ)さん
准看護師。介護支援専門員。特別養護老人ホーム 医療サービス部門マネージャーを経て、現在はエイジング・サポート実践研究会 生活看護師の会で活躍。
*著者プロフィールは2015年3月現在のものです。
●姉妹サイト オアシス介護 「私が思う 良い老人ホーム」で著者の小川利久さんに『良い老人ホーム』の見極め方をインタビューしています。