■書名:写真で学ぶ 拘縮予防・改善のための介護
■著者:田中 義行
■発行元:中央法規出版
■発行年月:2012年12月15日
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「動かせない、痛い……」拘縮の苦しみを軽減する適切なアプローチ方法を解説
介護施設や病院などの職場で、手や足などが曲がったまま、動かすことができない利用者を介護している人も多いのではないだろうか。身体を動かせないだけではなく、痛みも伴う「拘縮(こうしゅく)」には、以下のようなものがあるという。
・「火傷(やけど)」や手術切開部の引きつれなどで関節可動域が狭くなる拘縮
・皮下組織や腱(けん)、腱膜(けんまく)の原因に由来する拘縮
・神経が原因の拘縮
・長時間の固定、筋の短縮や萎縮などによっておこる拘縮
・関節構成体に属する滑膜(かつまく)や関節包(かんせつほう)などに由来する拘縮
また、拘縮で身体を動かせないことによって、以下のようなさまざまな苦しい状態を生み出してしまう。
・生活の質の低下(着替えや食事ができない、歩行困難など)
・褥瘡(じょくそう)の発生
・呼吸器障害
・身体が曲がった部分の汚れから発生する悪臭 など
理学療法士である著者の田中義行さんは、こう述べている。
<拘縮の予防は、最期まで人間らしく生きるためにとても重要であり、悲惨な状況を予防することにつながります。終末期ケアの基礎的手法として、拘縮予防のアプローチを行うことは必須であるといえます>
拘縮の種類はさまざま。本書では「寝たきりの状態で自ら動くことが難しい利用者」によく発生する拘縮の対応方法を中心に解説。さまざまな予防と改善のためのアプローチを紹介している。
拘縮がある人の介護は、四肢が自由に動かせる高齢者へのケアとは異なる。従来通りのケアを行った場合、利用者が楽にするどころか、苦痛を与えかねない。
本書では、拘縮のある利用者の共通点を整理。誰がやっても再現性が高い評価の対応方法を導き出して、よい結果が出やすくなるようにまとめている。例えば、以下のような方法だ。
・曲がってしまった四肢を無理なく動かす方法
・苦痛を取り除くポジショニング
・負担を軽減する起き上がり方法 など
また、介助する側も拘縮がある人の気持ちを理解することが大切だとして「試してみよう」 という情報も掲載。「腰の筋肉が動かないと息苦しくなる」「長時間同じ姿勢でいることが拘縮につながる」「下肢が外側を開くと歩きにくい」などを紹介している。利用者の苦しさを体験することで、より利用者に寄り添った介助ができるのではないだろうか。
<「拘縮予防・対応」が「目的」化するのではなく、あくまでもその利用者の生活をよりよくする「目的」のための「手段」の一つであると考えてください。拘縮が予防できた、改善できた、これで終わりではなく、その先のよりよい生活に目を向けてほしいと切に願います>
本書の拘縮予防・改善を取り入れた現場からは、「介護の方法が変われば、入居者も職員も変わる」といった声も寄せられている。適切な介助は利用者の生活だけではなく、介助する側の取り組み方も大きく変えていくことを体感してほしい。
<松原圭子>
著者プロフィール
田中 義行(たなか・よしゆき)さん
理学療法士。一般社団法人日本介護技術協会研究会会長。全国から研修依頼があり、研修会では介助の実際を見て体験し、わかりやすく理解することに力を入れている。「潜在力を引き出す介助-あなたの介護を劇的に変える新しい技術」(中央法規出版)などの著書がある。