■書名:いつもと違う高齢者をみたら 第2版 在宅・介護施設での判断と対応
■著者:荒井 千明
■発行元:医歯薬出版株式会社
■発行年月:2018年10月
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「おかしい」と感じた時が命の分岐点?高齢者の異変を判断するマニュアル本
『数日前に発熱し、その後も熱がある状態が続いている。』
もし、あなたが介護している利用者さんがこのような状態になったら、どう対応しますか?
このまま少し様子を見るのか、それともすぐに病院に連れていくべきか。迷うところだ。
いつもと違う状態にある高齢者を見て、自信を持って即座に対処できる人はそう多くはないだろう。
一歩間違えれば、死に直結するかもしれない事態に、適切に行動するための拠りどころとなるものが欲しいと思う人もいるはずだ。
そんな介護現場からのリクエストに応えてくれるのが本書だ。
本書は介護現場で必要な医学知識が足りないという施設幹部からの相談を受けて、著者の荒井さんが行ったレクチャーを書籍化したもの。
高齢者の体調変化を見極めるうえで役立つ知識をまとめた
“高齢者の急変時の対応マニュアル”として初版が出版された。
<介護や在宅の場で必要なのは医師に求められる診断学ではなく、判断力です。この状態は経過観察をしていてよいか、病院を受診したほうがよいか、救急車を呼んでまでしても病院受診をするべきかの判断ができればよいのです。
それには、情報の扱い方、まとめ方、考え方、伝え方も大事になってきます。それらを知ることで“急変した高齢者”への不安が薄らぎ、より好ましい判断ができるようになるでしょう。>
本書は以下の構成となっている。
第1章 「いつもとちがう」ことへの気づきは、なぜ大切か
第2章 症状とバイタルサインのみかた
第3章 いつもとちがう状態と、その対応
第4章 看取り対応の実際
第5章 これからの高齢者医療への対応
第1章・第2章では、高齢者を介護する現場のスタッフの心構えと、留意すべき項目(バイタルサイン、摂食・排便・睡眠状況)の見方についての概要を説明。
第3章では「食べない」「発熱した」「痛みを訴える」などの
具体的な症状と、その対応について詳しく解説されている。
どの症状についても、事例、共有すべき情報、ほかに確かめること、対応の仕方、想定される病態、荒井さんからの医学的アドバイスが掲載されていて、読みやすくわかりやすい。
第2版となる本書では、急変時対応と同じくらい対応に戸惑いやすい
看取り・終末期についても取り上げており、第4章・第5章では看取りや終末期での対応について触れられている。
看取り対応となったら安易に病院搬送はせず、苦痛緩和に努め、自然に任せる勇気を持ち、関係者の意思統一を図ることが大切だという。
そのためにも、事前に意思確認書を作成しておくことは有効で、急変時、終末期、心肺停止状態での対応に必要な要件についてもわかりやすくまとめられている。
人を最期までケアするには、家族、介護スタッフ、医療スタッフなど様々な立場の人の関係が絡み合っている。
利用者さんが穏やかな最期を迎えるために、介護に携わる者として必要な知識を学ぶことができる1冊だ。
著者プロフィール(引用)
荒井 千明(あらい・ちあき)さん
新潟大学医学部医学科卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。医学博士。現在、社会福祉法人湯河原福祉会・浜辺の診療所(神奈川県湯河原町)管理者。隣接する同法人特別養護老人ホーム・シーサイド湯河原配置医。社会福祉法人同愛記念病院内科(東京都)、国立伊東温泉病院(現伊東市民病院)、湯河原厚生年金病院(現JCHO湯河原病院)などでアレルギー・呼吸器系内科医として勤務。
その後、在宅診療や老健施設長の立場から介護医療福祉事業に関わったあと現職。労働衛生面では、自治体や企業職場のメンタルヘルス対策、ビジネス心理学、職業病などに取り組み、刊行物やビジネス誌のコラムによる啓蒙活動にも参加。