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2016年03月18日

『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

book■書名:へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々
■著者:鹿子裕文
■発行元:ナナロク社
■発行年月:2015年12月15日

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無謀で無計画!? 資金ゼロ状態から、特養の建設を実現した「宅老所よりあい」の人々

老人介護施設を作るとなると、規模にもよるが1億円以上かかることも少なくないのではないだろうか。
資金が豊富な法人が介護事業に参入し、施設を作るという話はよくある。しかし、本書で紹介している特別養護老人ホーム「よりあい」は、お金なし、権力なし、コネなしといった状態の中から誕生した。わずか3カ月という期間で、土地購入のための1億2,000万円をかき集めたというのだから驚きだ。
本書では、資金もなく、さまざまな難題がつみ重なる中、特別養護老人ホームづくりに挑み、実現させるまでのストーリーを軽妙なタッチで、時には皮肉を織り交ぜながら描いている。

資金ゼロの状態だったのに、どうやって施設建設のための資金を工面できたのか。
お金は、職員が作る手作りジャムを販売したり、お祭りやバザーで光るおもちゃを子供に売ったり、運営するカフェで販売する手作りケーキやランチの利益をコツコツと貯めたものだという。中には彼らの活動に賛同する人から贈られる寄付なども含まれている。しかし、これら”コツコツ”の積み重ねの裏には、彼らの「介護」に対する姿勢が評価され、理解の輪が広がったことが大きいと感じられる。

「よりあい」のはじまりは、まだ介護施設に対する理解が薄い20年以上も前に、メンバーの一人・下村恵美子さんが、明治生まれの認知症の女性に出会ったことがきっかけだ。糞尿まみれで、家の衛生状況も悪く、その異臭で近所から苦情が来るほどの“強烈なばあさん”を引き取ってくれる施設はなく「なんとかしたい」という思いから始まったという。

<一人の困ったお年寄りから始まる。一人の困ったお年寄りから始める。(中略)目の前になんとかしないとどうにもならない人がいるからやるのだ。その必要に迫られたからやるのだ。それは理念ではない。行動のあり方だ。頭で考えるより前にとにかく身体を動かす。要するに「つべこべ言わずにちゃちゃっとやる!」のだ>

このような姿勢で、「老人介護施設よりあい」の前身であるデイサービス「宅老所よりあい」がスタートした。その宅老所の介護は、“一人のお年寄りからすべてを始める”のがモットーとなっている。
アクティビティのプログラムもない、リハビリもしない。混乱しているお年寄りに付き合い、その人に「沿おうとする」のだ。ベタベタと寄り添うのではなく、川の流れに沿うように、自然に沿うのだという。

だから、暴力行為がある若年性アルツハイマーを抱える家族が、介護に疲弊した様子を涙ながらに窮状を訴えれば、「なんとかしないとどうにもならない人がいるからやる」の血が騒ぐ。激しい混乱と、混乱ゆえに起こる暴力に果たして沿うことができるのか。また、どんな介護ができるのかを全職員で話し合い、受け入れを決めた。職員は利用者に殴られて体中に青アザを作りながらも、錯乱する彼のそばに、沿い続ける。

<前例がないからとか、保証がないからとか、そういうことを頭に少しでも浮かべてしまったら、新しいことは何ひとつ動き出しはしない。新しいことはいつだって、無謀で無計画で、前例がなくて保証がないところからしか生まれてこないのだ>

彼らは「老人ホームに入らないで済む老人ホームを作る」と語っている。
遊び半分でもいいから「よりあい」に来て、利用者たちの話し相手になったり添い寝したり、バザーで売る商品を作ったりして「自分の時間を誰かのために使う」ことを提案している。そのように「よりあい」に通い、手伝いを続けてきた人たちが歳をとってきたら「あんなにお世話になったのだから、次は施設がお返しをする番」になる。
何年も通い、手伝ってくれた人だから、施設もその人がどんな人かよくわかっている。どのような支援が適しているのかも理解した上で、ギリギリまで在宅で暮らせるよう支えていくのだ。どうしても、在宅での暮らしが難しくなってきたら、「よりあい」への入所を考えればいいという。お年寄りの添い寝に来ていた人が、今度は添い寝される側になるというわけだ。

このような施設の取り組みは、周辺住民に理解を得てもらうための説明会でも語られた。全9回にわたって行われた説明会では、のべ248人の住人が参加したが、ホーム設立に対する反対意見はでなかったそうだ。

本書には、介護の現場で役立つ知識や、技術のノウハウの記載はない。設立にあたり、次から次へと難題が立ちはだかるのだが、深刻さは全く感じない。難題にノックダウンされることなく、逆に楽しみながら、面白がりながら打破していく様子が痛快だ。肩肘張らずに読めるだけではなく、読み終わったあとは不思議に元気な気持ちになれる本だ。

<松原 圭子>


著者プロフィール

鹿子 裕文(かのこ・ひろふみ)さん
1965年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。ロック雑誌で編集者を勤めた後、1998年にフリーの編集者に。2013年「宅老所よりあい」という老人介護施設で起きた面白い出来事を取り上げる雑誌「ヨレヨレ」を創刊。

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