■書名:福祉職・介護職のためのマインドフルネス
■著者:池埜 聡
■出版社:中央法規出版
■発行年月:2017年9月
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ストレスケアはできている?福祉・介護職が実践したい心のコントロール
利用者の心のケアに気をつける一方で、自分自身の心のケアはおろそかになってはいないだろうか。
ストレスを抱えて燃え尽きそうになってはいないだろうか。
健康で自分らしく仕事に向き合っていくためには、ストレスから身をまもる方法を知っておきたいもの。
そこで本書がすすめるのが「マインドフルネス」だ。
ストレス軽減の有効な方法として、近年急速に認知され、注目を集めるマインドフルネス。
本書では、その仕組みや実践方法について、特に福祉職や介護職の人に向けて解説している。
マインドフルネスとは、学会の定義によれば「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」。
これだけでは抽象的でイメージしにくいが、例えば「呼吸」で言うなら、呼吸そのものに意識を向けること。
息の出入りという無意識にできることを意識的に行い、呼吸に集中するのだ。
この方法(プラクティス)は、「呼吸瞑想」と呼ばれ、「今、この瞬間の自分」の存在に気づくための練習になるのだという。
呼吸瞑想についてさらに詳しく紹介すると、例えばこのように解説が続く。
<気持ちが落ち着いたら、ゆっくりと呼吸に意識を向けます。鼻呼吸をしましょう。鼻腔を通る空気の冷たさや温かさ、肩、胸、おなかの動き、呼吸の始まりと終わりなど、どれでもいいですから一つの感覚に注意を向けます。注意を向ける対象が移り変わっても、それに気づいてさえいれば問題ありません。>
呼吸から注意がそれても、そのことで自分を責める必要はない。
ただ、浮かんできた思いや考えの内容に「良い・悪い」の判断をせず、ありのままの変化を受け入れながら、またゆったりと呼吸に意識をもどしていけばよいのだそうだ。
続いて紹介される「食べる瞑想」や「歩く瞑想」もわかりやすく、マインドフルネスの理解にも役立つ。
食べる瞑想では食感に、歩く瞑想では歩くことだけに意識を集中させる。
そして、自然に湧き起こってくる考えや思いをあるがままに受け入れ、再び穏やかに食べる行為や歩く行為に意識をもどしていく。
本書には、こうしたプラクティスが全部で16種紹介されており、それぞれ1日5分から取り組んでいける。
プラクティスを続けていくことで、自分の状態を客観的に見つめ、感情に揺さぶられない心の保ち方が養われるのだという。
また、本文にふんだんに織り込まれたコラムでは、実際にマインドフルネスを実践した福祉職・介護職の人々の声も多く紹介されている。
<マインドフルネスをやって解き放たれるというか、その一瞬だけでも。すっと「あ、落ち着かな、落ち着かな」というか。意図的に呼吸に意識を向けますね。ここに空気通るのが分かるんです。鼻の奥、鼻腔のとこね。すると、焦ってた自分がふっとまた我に返って、じゃこれ先に片づけよかなと。やっぱり余裕が出てきますね>
彼らの率直な声を聞けば、気負いなくマインドフルネスを始められるのではないだろうか。
著者プロフィール
池埜 聡(いけの・さとし)さん
カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院社会福祉学科博士課程修了。現在、関西学院大学人間福祉学部社会福祉学科教授。専門は臨床ソーシャルワーク、心的外傷学 (traumatology)、マインドフルネス。著書に『ケアマネジメントにおける援助関係の軌跡 クライアントとの間にあるもの』関西学院大学出版会(2017年・共著)、『たましいの共鳴 コロンバイン高校、附属池田小学校の遺族が紡ぐいのちの絆』明石書店(2013年・共著)など。