■書名:新開発! 国立長寿研の4色あしぶみラダー 認知症予防のための脳活性化運動コグニサイズ入門
■監修:島田裕之
■発行元:小学館
■発行年月:2014年9月8日
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足踏み運動で楽しく認知症予防できる「コグニサイズ」とは?
本書は、オリジナルの組み立て式「4色あしぶみラダー(はしご)」を使った脳活性化運動の手引き書だ。この運動が認知症予防につながると言う。
最近、書店でよく見かける、付録と冊子がセットになったタイプの大型本だ。本書には、「4色あしぶみラダー」本体と、使い方が書かれた16ページの冊子がセットになっている。
まずは、「4色あしぶみラダー」を説明しよう。
付属の箱を開けると、青、黄、赤、緑の4色に色分けされたテープが入っていて、決められた通りに組み立てれば「ラダー(はしご)」が出来上がる。それを床に広げれば準備完了。
運動のイメージは、このページの上にある本書の表紙写真を見てほしい。
基本は、「1,2,3,4…」と番号を声に出しながら、ハシゴの枠の中を左右順番に足踏みして前後に進むだけ。そこに、色や番号にルールを決めておく。たとえば、「赤のところで足を枠の外に出す」とか、「赤で足を外に出し、青で拍手をする」といった具合だ。「2,7,9で足を外に出すが、青のときには出さない」のように色と番号を組み合わせれば、ぐんと難易度も上がる。
つまり、「数字を記憶しながら足踏みしてマス目を進み、該当の数字の箇所で特別な動作をする」という、同時に2つの作業を行う「デュアルタスク」を課す運動だ。
NHKの認知症キャンペーンとして、体操の佐藤弘道おにいさんが、この「4色あしぶみラダー」を体験するシーンがスポット的に何度か流れていた。見た方もいるのではないだろうか?
本書の監修者、島田裕之さんとそのチームは、この運動を「コグニサイズ」と名付けた。認知を表す英語「コグニション」と、運動を表す「エクササイズ」をかけ合わせた造語だとか。
<有酸素運動については、認知機能向上に有効であるという研究がありますが、その効果は限定されています。コグニサイズは、有酸素運動を中心とした運動に加えて脳にも負荷をかける、例えば歩きながら引き算をする、踏み台昇降をしながらしりとりをするなど、頭を使う作業を加えることによって脳の活性化をめざすプログラムです。>
この「有酸素運動と認知課題の組み合わせが、より効果的」だと言う。
認知症の原因疾患のひとつにアルツハイマー病があるが、今はまだ治療法が確立されていない。しかし、認知症を発症する前の「軽度認知障害(MCI)」の段階であれば、正常へ回復可能であることがわかってきたと言う。
島田氏らは、コグニサイズがMCIにどのような影響を与えるか、308名のMCI高齢者を対象に検証。
すると、「コグニサイズを導入した運動教室に参加した人では、記憶力の向上、海馬周辺の萎縮の抑制が見られた」のだとか。
そのコグニサイズを自宅で楽しく、簡単に楽しめるよう開発したのが「4色あしぶみラダー」。
冊子には、4色あしぶみラダーの「組み立て方」「しまい方」「基本のあしぶみ」に始まり、6つのルールとバリエーションルールが紹介される。1日10分間が運動の目安。日課のように続けることが大事だと言う。
付属のラダーを組み立てれば、いつでも簡単に運動できる。介護の現場でも、ミニゲームのような形で取り入れてみてはいかがだろうか。足踏みするだけなので簡単そうだが、実は意外と頭を使う。テストを受けるようにガチガチになって行うのではなく、間違えたらみんなで笑い、楽しんで取り組むということが大事だろう。
まずは指導するスタッフが練習してみることをオススメしたい。
<小田>
著者プロフィール
島田 裕之(しまだ・ひろゆき)さん
国立長寿医療研究センター・生活機能賦活研究部部長。2003年北里大学大学院博士課程修了(リハビリテーション医学)。東京都老人総合研究所研究員、Prince of Wales Medical Reserch Institute(Sydney,Australia)客員研究員、日本学術振興会特別研究員、東京都健康長寿医療センター研究所などを経て、現職。専門領域はリハビリテーション医学、老年学。認知症予防や寝たきり予防を目指し、高齢者の健康増進のためのプログラムの開発と効果の検証を実践している。