シナプソロジーとは、脳を活性化させ、認知症予防やストレス緩和にも効果があるプログラム。ゲーム感覚で行うことができ、高齢者のレクリエーションに取り入れる事業所、施設も増えています。
このコーナーでは、シナプソロジーインストラクターのふーちゃんこと、介護福祉士の山﨑史香さんに、介護施設や、デイサービスなどで楽しめるプログラムを教えてもらいます。
認知症や麻痺のある人向けの「指揮者」をやってみよう
みなさん、こんにちは!今日も元気にシナプソロジーインストラクターのふーちゃんです。
前回に、引き続き「指揮者」というプログラムをご紹介します。前回は元気なお年寄り向けのアレンジでしたが、今回は
認知症や麻痺がある人向けにアレンジした楽しみ方をお伝えします。
さぁ~今週も楽しみながら脳をワクワク活性!シナプソロジーを始めていきましょう。
【1】まず、以下の基本動作を覚えましょう!
はじめに、両手の動きを覚えましょう。利き手はスカーフを持って2拍子で上下に振ります。
利き手と反対の手は2拍子で左右に動かします。
軽度・中度の認知症がある方への指導ポイント
基本動作は、ゆっくり練習しましょう。
今回は道具を使ったプログラムです。ハンカチやスカーフがなくても、ティッシュで代用することもできます。参加される方の中でティッシュを食べてしまう異食の恐れがある方がいる場合は、スタッフが近くで見守り、付き添って行うと良いと思います。
はじめのうちは、スタッフの動作をすべてマネしてしまう場合があるかもしれません。サポートに他のスタッフに入ってもらい、基本動作を覚えてもらいましょう。参加される方の中に認知症の方が多くいる場合はサポートのスタッフを増やし、こまめに声かけをしながら一緒にやってみてくださいね。
また、説明するときは難しい言葉はなるべく使わずに、理解しやすい言葉で伝えましょう。たとえば、「脳が活性化する」ではなく、「頭の回転が良くなる」「頭が元気になる」「頭の血の巡りが良くなる」など。
中には耳の遠い方や、早口だと聞こえない方もいるので、指示をする皆さんは、ゆっくりと話すことを意識しながら行いましょう。また、いきなプログラムを進めるのではなく、プログラムに入る前に、季節や、思い出を引き出す回想法で場を和ませることも大切ですね。参加される皆さんの心をほぐしてから行うと進行が進めやすいと思います。
麻痺や体を動かしにくい方への指導ポイント
今回は両手で別々のリズムの動きを行いますが、麻痺があってもできます。
例えば、左手麻痺であれば、右手でスカーフを2拍子で上下に振ってもらい、動く方の足どちらかを左右に動かすことで、2拍子のリズムをとってもらいましょう。
両手でなくても、片足で2拍子をとってもらい手でスカーフを振る基本動作に変えても良いと思います。
※両手が動かないとできない!と思わずに。できないと無意識に決めつけてしまうのは、介護者側の偏った見方の場合があります。
工夫や、声がけ、サポートの仕方次第で参加していただけます!
両手ではできないだろうから、参加メンバーに入れないという選択ではなく、その方のできる事にフォーカスしてみてくださいね。中には片麻痺だからと参加を諦めている方もいると思います。その方に添った声がけをしながら、麻痺があっても脳を活性化できる事も、伝えてみてください。
●指示者の声がけ
「片手で大丈夫ですので、まずは一緒にやってみましょう!
片足は、かかとを軸にして、左右にリズムをとりながら、手に持ったスカーフを振ってみましょう。
このプログラムは集中力を使って脳を活性化させますよ」
一人だけ片麻痺の方が参加者にいる場合は、スタッフ一人がそばで動作の説明をしながら行いましょう。麻痺の方が数人いる場合は、麻痺の方だけの小グループで行うのも良いかもしれません。
参加者の“できる”を引き出す
できない事よりその方ができる事を引き出すのが、介護現場で働く私達の腕の見せ所です。
【2】基本の動作を覚えたら、みんなで実践してみよう!
動作を覚えたら、いよいよシナプソロジーがスタート!
「イチ、二、イチ、二」とリズムをとりながら、基本動作を練習してみましょう。基本の動作の2拍子ができたら、10まで数えながら行います。
下にある動画では短時間でお伝えするためにテンポ良く次に進んで行きますが、耳が遠い方、理解度に差がある参加者がいる場合は、焦らずやってみてくださいね。
●指示者の声がけ
「両手の動きを、同時にやってみましょう。『イチ、二、イチ、二』とリズムをとりながら練習してみましょう。」
「では、今練習した2拍子で、数字を声に出して10まで数えながら行います。」
指示が上手く伝わらない時は
まずはスタッフがやってみせよう!間違った時が、笑いの神さま到来ですよ。スタッフも、間違う!戸惑う!考える!それを笑いに変えて、盛り上げます。
指示者の声かけ
「あらぁ〜、こんがらがってます!私が1番、頭が元気になってますね!」
「いいんですよ。一瞬、あれ?って考えてる時が1番、頭を使ってるんですよ」
「若くたって間違えます!年齢じゃないんです。こうやって笑うのが1番心の栄養になります」
認知症の方は新しい事が苦手です。できない事に喪失感を感じてしまいます。行動についていけなかったり、難しくてやめてしまった時は、まずは楽しむ事を意識して声かけしていきましょう。はじめは周りの参加者同士で笑い合い、雰囲気を楽しむところから第一歩を踏み出してみましょう。
【3】新しい刺激をチャージ!スパイスアップ 初級編
慣れてきたら、次はスパイスアップ(新しい変化)です。
今度は、利き手は3拍子でスカーフを振る。
利き手じゃない方はいままでと同様に2拍子。
●指示者の声がけ
「今度は、利き手と反対の手は、今まで同様に左右2拍子です。同時に利き手は三角を描くように、
『イチ、二、サン、イチ、二、サン』の3拍子で動かします。では、数字を1から声に出して15まで
数えながら行いましょう。」
※15まで数えてみましょう。参加される方のレベルに合わせて、難しい場合は10までにしましょう。
【4】新しい刺激をチャージ!スパイスアップ 中級編
左右の手を入れ替えて行う。
●指示者の声がけ
「では、スパイスアップ!
今度は左右の手を入れ替えて行いましょう。利き手と反対の手にスカーフを持ち替えて、3拍子で振ります。
利き手は左右に2拍子です。やってみましょう。」
※15まで数えてみましょう。参加される方のレベルに合わせて、難しい場合は10までにしましょう。
ふーちゃんのワンポイントアドバイス
今回のプログラムを楽しむコツは、オーケストラの指揮者になったつもりで手に持ったスカーフをなめらかに振ることです。前置きで、有名な指揮者の名前について小話をしたり、音楽の豆知識を伝えると、流れができて良いですね。
指示者は手の動きが良かった参加者に「○○さんの手の動きはベートーベンも腰抜かすくらい上手ですよ!」「まるで目の前にオーケストラが居るみたいですね。」など、声をかけて盛り上げましょう!2つのリズムの異なる動作を同時に行うこと、そして声を出して身体を動かし、新しい刺激の変化に反応することで脳はイキイキします。片麻痺、認知症があったとしてもそれを1つの個性と捉えて、指導者は参加される方が如何に楽しみながらできるかを考えて行ってみてくださいね。
※説明・進行していく中で、初めてで、緊張したり、上手く笑いが取れなかったりすることもあるでしょう!
ですが、それも楽しむ心が大切です。心折れてはいけませんよ〜。プログラム、と聞くとその通り進行しなければいけないという気持ちになってしまいますが、全て遂行することが目的ではありません。
笑いながら、脳が混乱して間違える事を「みんなで楽しむ事」が大切です。
慣れてきたら、「脳の活性化プログラムである事」を意識して、行っていけば良いと思います。
一度、スタッフ同士でやって難易度を確認してから、参加者のレベルに合わせてアレンジしてみましょう。
なお、軽度認知症には個人差があります。初めてプログラムを進行する場合は、指示者のサポート役にもう1人加え、2人で進行できるとベター。様子を見て、フォローしながら進めていけるとよいと思います。
次週は、新しいプログラム「手足トントン」になります!どうぞ、来週もお楽しみに!
次回も元気にシナプソロジー! またお会いできるのを楽しみにしています。
「指揮者」を動画で見る
<シナプソロジーについて>
→シナプソロジーの特徴と効果とは?
→「指揮者」元気なお年寄り向けのアレンジはこちら
プロフィール
ふーちゃん こと 山崎史香(やまざき・ふみか)
キャリア11年の介護福祉士。現場で介護職員として働くかたわら、子供や若者達が触れやすい介護の新しい入り口作りを目指し、「介護イノベーションART」など施設を離れた活動も積極的に行う。地域、現場から発信するスタイルの介護福祉士として、注目の存在。電子書籍絵本
『しわのようせい』の作者でもある。
そのほかの活動として主なものは、寝たきりの方の見ている白い天井の景色をARTで変える「花咲かじーさんプロジェクト」、子供達へのシワ物語り「介護授業」、4度目のハタチを謳歌する為の「介護予防サロン」を開催。今までの活動が、目に止まり、宮城県仙台市のケアヒーローに選ばれる。また、福祉事業、介護の魅力を伝えるプロモーション、パンフレット、雑誌等にも出演している。
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