■書名:絵で見てわかる かみやすい飲み込みやすい食事のくふう
■著者:山田 晴子(食事指導)
■発行元:女子栄養大学出版部
■発行年月:2010年9月23日
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飲み込みにくくなった高齢者のために、安全でおいしいアレンジ法を紹介
訪問ヘルパーをはじめ、高齢者に食事を作って提供する介護職にとって、「安全においしく」というのは重要なキーワードだろう。
高齢になると、飲み込む力や噛む力が徐々に衰え、今まで食べていた料理が食べにくいと感じるようになってくる。
飲み込みにくくなると、誤嚥性肺炎のリスクが高まったり、食べる量が減って栄養不足に陥ることもあるから、細心の注意が必要だ。
では、とりあえず小さく刻み、やわらかくすれば安全かといえば、そうとも言えない。
かえって、噛む力が弱まったり、唾液が出にくくなることも。
なにより、食が進まなければ意味がない。
<今まで食べていた料理が食べにくくなったと感じる程度であれば、ひとくふうするだけで、いつもの料理を噛みやすくて飲み込みやすくできます。
(中略)いつもの料理を少しアレンジするくらいが、食べる機能を維持するためにはよいのです。>
そこで本書が紹介するのは、「いつも作っている料理をどう工夫したら食べやすくなるか、どんな食材を選べば食べやすいか」というポイントだ。
レシピの紹介に重点を置く内容ではなく、食材の選び方や切り方、調理のコツを教えてくれるハウツー本という位置づけだろう。
高齢者にもわかりやすく、というコンセプトで作られていることから、イラストを多用。
文字を読み込まなくても直感的に理解しやすい。
文字も大きく読みやすいのも特徴だ。
また、実際に料理を作るときに困らないようにという配慮が随所に感じられる。
たとえば、飲み込みやすくするためにとろみをつければ良いことは知られているが、ではどの程度のとろみをつければ良いのか。
本書では、汁物・煮物・あんの3つに分けて、片栗粉の目安を説明するなど、かゆいところに手が届く解説が印象的だ。
具体的な料理に関しては、主食、汁物、主菜、副菜、間食、飲み物に分類されているので、自分が作りたい物を探しやすい。
掲載されている料理の数は多くはないが、いわゆる家庭料理の定番は押さえてある。
たとえば主菜では、焼き魚、煮魚、天ぷら、おでん、すき焼き、フライ、ハンバーグ、卵料理など20種類ほどが紹介されている。
「焼き魚」のページを見ると、塩焼きをふっくら焼き上げるコツや、やわらかく仕上がるホイル焼きの提案など。
「ハンバーグ」のページでは、挽肉は二度びきし、おからや豆腐を加えて混ぜると良いといったアドバイスも。
また、高齢者が好きな「豆腐」が、実は誤嚥しやすいことに触れ、おぼろ豆腐や寄せ豆腐を選ぶと良いと提案。
冷や奴には醤油の代わりにあんをかけると食べやすくなる、といったヒントも紹介されている。
ただし、あくまでも本書のメインは、食べやすくするためのコツや注意点。
そのため、それぞれの料理の細かな作り方は最後の付録にまとめてある。
たくさんのレシピを知りたいという人や、料理の作り方を一から教わりたい人には、本書は向かないかもしれない。
できれば定番の料理の作り方を知った上で、利用するのがオススメ。
本書に載っているコツをマスターすれば、あとは自分で他の料理にも応用できそうだ。
著者プロフィール
山田晴子(やまだ・はるこ)さん
1986年日本女子大学大学院修了。
栄養士。
元日本歯科大学附属病院臨床講師、元相模女子大学短期大学部講師。
現在は、介護食アドバイザー通信講座(日本フローラルアート)で指導を行っている。
研究分野は、高齢者、小児歯科栄養学。
著書に『家族いっしょのユニバーサルレシピ』『改訂新版 かむ・のみこむが困難な人の食事』(ともに女子栄養大学出版部刊/共著)などがある。