■書名:49歳 未経験 すっとこ介護はじめました!
■著者:八万 介助
■出版社:小学館
■発行年月:2014年10月29日
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笑える!泣ける!そして心があったかくなる。介護コミックエッセイ
フリーランスとして漫画・イラストの仕事をしてきた著者・八万介助氏が介護の仕事をはじめようと思ったきっかけ、いや、「はじめなければならなかった」理由からストーリーは始まる。
企業に勤めた経験はほとんどない、資格もない、49歳の「オジさん」が飛び込んだのは、老健(介護老人保健施設)の認知症棟のパートヘルパーだった…。
「仕事がないから介護職なんて、そんな動機でいいの?」「未経験で認知症ケアは難しいのでは?」。介護の仕事をしている人なら、そう思うかもしれない。
確かに八万氏は、はじめての介護に悪戦苦闘。キビキビと動くベテランスタッフに圧倒され、気まぐれ(?)な利用者にふりまわされ、慣れない介助に四苦八苦する。しかし、その中にチラリと垣間見えるエピソードが、とにかくおもしろいのだ!
天使のような看護師長が「あるきっかけ」でブチ切れたり、50歳オーバーのベテラン介護スタッフが「コイバナ」で盛り上がっていたり…。介護スタッフ間のうわさ話や怪談、介護業界のウラ話など、「介護職」ではなく、「介護施設で働く人々」をリアルに伝えるエピソードの数々は、人間くさくて、ちょっとこっけいで、だからこそかわいくて、思わず笑ってしまう。
そんな「笑い」もありながら、八万氏を叱咤激励する周囲のベテラン介護スタッフたちの言葉からは、介護の現場の厳しさもしっかり伝わってくる。
<利用者をちゃんと見守りしていないと!!人の命に関わるんだからね!!!>
<ちょっとくらいオムツ交換覚えたからって調子に乗らないほうがいい!!利用者にとって本当はオムツなんてつけないのが一番いいんだから>
<風呂で事故が起きたらお年寄りは死んじゃうからね!!!その時はあんたの人生も終わりだと思った方がいい…>
<君のやっていることは介護じゃないんだよ。利用者のADLを低下させる過保護!!>
<死に慣れてしまってはいけませんよ。私たちは「介護」なんです。「おくりびと」じゃありませんからね!!>
こういった言葉や、さまざまな経験を通して「介護の仕事は人の命に関わる仕事なんだ」と気づいていく八万氏。
八万氏は「人が好きだ!」「この仕事が好きだ!」と声を大にして言ってはいない。しかし、介護の現場を伝える視点はどこまでもやさしく、笑いながらも心があたたかくなってくるのだ。
介護の仕事をはじめたばかりの人には、今のあなたを応援してくれる一冊として、ベテランの人にとっては、笑いながら初心を思い出させてくれる一冊として、ぜひおすすめしたい。
著者プロフィール
八万 介助(はちまん・かいすけ)さん
介護ヘルパー・漫画家・イラストレーター。別のペンネームで、長年、学年誌やコミック誌、情報誌などでギャグ作品を中心に執筆。また。学年誌・女性誌などでイラストレーターとしても活躍していたが、雑誌の休刊などで漫画・イラストの仕事が減り、2010年から介護老人保健施設でパートとして働き始める。その後正社員になり、2014年、介護福祉士の資格を取得。