■書名:がんばらない介護
■著者:橋中 今日子
■出版社:ダイヤモンド社
■発行年月:2017年3月
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介護職も知っておきたい!がんばりすぎる家族の心を軽くする36の“コツ”
世界一の長寿国である日本。しかし平均寿命は伸びていても、1人で元気に生活できる健康寿命の伸び率は低迷しているという。
平均寿命と健康寿命の差は約10年。最後の10年は、誰かの手助け(=介護)なしには生きていくことが難しい状態になる。今や介護は誰の身にもふりかかる問題であり、しかも突然やってくるものとなった。
そういったなかで、介護にどう向き合えばいいのか? それに答えてくれるのが本書である。
著者の橋中さんは、理学療法士として病院に勤務するかたわら、認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟の3人を21年間1人で介護してきた。
病院では遅刻、早退、欠席を繰り返すため、退職を迫られた。そこで、隠してきた家族の事情を初めて上司に打ち明け状況が変わったという経験の持ち主だ。
こうした自身の経験とブログに寄せられた500件もの介護の悩みをもとに、介護に直面している人たちにとって、すぐに役立つ情報を一冊にまとめた。
<人は追い詰められると、“限られた情報”の中で「この方法しかない」と判断しがちです。介護離職はもちろん、介護殺人や心中事件へ発展するケースのほとんどが、そうした限られた情報の中で絶望してしまうことが原因になっています。しかし、外部に助けを求め、相談すれば、新しい情報が得られて選択肢も増え、つらく悲しい事件を防ぐことができるのです。>
・1回ですべてを解決しようとしない
・1人で解決しようとしない
・家族の中だけで解決しようとしない
これが橋中さんの言う「がんばらない介護」の3原則である。
本書は上記の3原則にもとづく、介護者の心を軽くする36のコツを、具体的な悩みに答える形で紹介している。
悩みとそれに対する回答は下記のようなものだ。
「どこに相談すればいいの?」→「迷ったら“介護のよろず相談所”地域包括支援センターへ」
「施設を利用するのは親不孝…」→「施設利用に後ろめたさを感じる必要はない」
「あの親の介護をなぜ私が?」→「関係がよくない親なら、愛ある介護じゃなくていい」
「赤ちゃんがいるのに、親が倒れた!」→「ダブルケアすることになったら、自分の家族を優先する」
「私だけ幸せになっていいの?」→「介護を理由に、恋愛や結婚をあきらめてはいけない」
なかなか口に出せないことも本音でズバリと答えてくれ、勇気づけられる家族も多いはずだ。
要介護者は性格も生い立ちもさまざま。もちろん、その家族も十人十色である。介護に関して経済的な不安を持つ人もいれば、感情的なことで悩む人もいるだろう。
介護職が要介護者の家族の事情や心情を理解することは大切である。本書は読みやすい内容なので、手軽にその理解を深めることができそうだ。
著者プロフィール
橋中 今日子(はしなか・きょうこ)さん
理学療法士。リハビリの専門家として病院に勤務するかたわら、認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟の3人を21年間にわたって1人で介護する。仕事と介護の両立に悩み、介護疲れをきっかけに心理学やコーチングを学ぶ。介護に悩む人に「がんばらない介護」を伝える活動を全国の市町村で展開しながら企業では介護離職防止の研修も担当している。