■書名:転倒しない人はすでにはじめている「エアリハ」3つの習慣
■著者:日向亭 葵
■出版社:エール出版社
■発行年月:2017年8月
>>『転倒しない人はすでにはじめている「エアリハ」3つの習慣』の購入はこちら
“お笑い理学療法士”考案の「エアリハ」で、脳をだましてラクに転倒予防!
「エアリハ」という言葉をご存じだろうか。
聞いたことはあるけれど内容はよくわからない、という人もまだ多いかもしれない。
「エアリハ」とは、エアギターのように「エアー(想像)」でするリハビリ体操のこと。これまでになかった、新しい発想の体操だ。
この「エアリハ」の考案者は、本書の著者・日向亭葵さん。
「お笑い理学療法士」を名乗る、社会人落語家にして理学療法士の方だ。
老人会などで落語と体操の2つを行っている中で、ある時ひらめいたのだという。
リハビリでは通常、重りや器械などの道具が必要となる。
一方で、落語は、道具を使わずにお客さんの想像力で場面を思い描いてもらう想像の芸だ。
「エアリハ」では、落語の「想像」とリハビリの「体操」を融合。リハビリを、落語のように想像でやってみるというわけだ。
具体的に「エアリハ」とはどのようなものか、「第三章 エアリハ実践編!」で最初に紹介されている体操を見てみよう。
背中が丸くなる「円背(えんぱい)」を予防・改善する体操の一部は、次の通り。
<まず、目の前に長さが1メートル程度の「ゴムチューブ」がある、と想像してください(少し硬いかなと思えるぐらいのゴムチューブを想像するほうがちょうどいいです)。そのゴムチューブの両端を持って、両手で横に引き伸ばすように引っ張ってみましょう。両腕に力が入るのが分かりますか?>
何も想像しなければ腕に力は入らない。ところが、ゴムチューブを引っ張っていると想像するだけで、ぐっと腕に力が入るようになる。
脳がだまされて、より筋肉を使うようになるのだという。これが「エアリハ」のからくりだ。
本書で紹介されている「エアリハ」は、肩甲骨周り、太もも、バランスの3点を中心に、大きく分けて3つ。
・「ゴムチューブを引っ張ると想像する」動きで、肩甲骨周り
・「コーヒーカップを頭の上に乗せたつもりになって立ち座りをする」動きで、太もも
・「片足でプールの水をかき混ぜているつもりで大きく回す」動きで、バランス
を、それぞれ鍛えていく。
さらに本書では、体操を「習慣化」するためのコツについても、力を入れて書かれているのが印象的だ。
「エアリハ」がどんなに優れた体操でも、それを継続できないことには効果はあらわれないからだ。
著者は、エアリハを習慣化するためのコツについて、次のようにまとめている。
a. 大きな目標を決める
b. 期限を設ける
c. 目標を人に話す
d. 気がのらない時は「しない!」と決める
e. きっかけ作りをする
ここに書かれているコツは、リハビリに限らず、著者からの高齢者一人ひとりへのエールでもあるようだ。
特に目標については、「人生の目標こそが心の支えであり、毎日を生き生きとさせてくれる生きがい」という強い思いが根底にあり、本書を普通のノウハウ本とは一味違ったものにしている。
著者の講演をそのまま文字で表したような読みやすい文章で、楽しくくつろぎながら読み進められる。
介護職はもちろん、特に高齢者の運動指導に関わる人なら、一度は手にとってみてほしい1冊だ。
著者プロフィール
日向亭 葵(ひなたてい・あおい)さん
本名 繁岡秀俊(しげおか・ひでとし)。お笑い理学療法士。「おしゃべりテーションの会」代表。1968年、奈良県三郷町生まれ。天理大学外国語学部英米学科卒業。阪奈中央リハビリテーション専門学校卒業。全国の高齢者に介護予防を笑いで伝える専門家として、年間100講演・1万人以上の高齢者の「痛み」を「笑い」に変える独自の講演スタイルで、日本全国で好評を得る。