■書名:愛される介護リーダーの教科書
■著者:谷本 あゆみ
■出版社:ギャラクシーブックス
■発行年月:2017年12月
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問いかけを変えると介護の現場が変わる!愛されるリーダーの6つの条件
あなたが介護職のリーダーになったとしたら―。
利用者である高齢者の方とはもちろん、その家族とも信頼関係を築かねばならない。最高のサービスを提供するためには、スタッフ間の情報共有は欠かせないし、お互いに協力しあうことも大切だ。
いろいろなことに気遣う毎日。そんな中で、ふと不満や疑問がわいてくる。
「なんで、あのスタッフは利用者の立場になって言動できないのか?」
「なんであの人はいつも陰口をたたいているのか?」
「なんで仕事が次々やってくるのか?」
そうしていくうちにスタッフが1人辞め、また1人辞めていく。
自分は本当にこの職業を続けていいのだろうか?リーダーとしてやっていけるのだろうか?
さあ、どうしよう―。
そんな時に本書を読んでもらいたい。
著者の谷本さんは、いま挙げたような状況に陥り、抑うつ状態になって介護の仕事を休職した経験を持つ。
3カ月の休職を経て復職した谷本さんは今まで部下に仕事を任せていなかったことに気づく。
「これをやってちょうだい」と指示を出すやり方は、現場のスタッフにとっては上司から仕事をやらされているということにほかならず、利用者への対応にも心がこもりにくかったという。
スタッフ育成の必要性を改めて感じた谷本さんは、仕事の仕方やスタッフとの関わり方を変えようとして、質問力を養っていったそうだ。
谷本さんの肩書である「質問家」とは聞きなれないものだが、簡単に言うと、教えたり、指示命令したりすることなく、相手の成果を引き出すプロのこと。相手が自発的に物事を考え、答えを出すことができるような「問いかけ」をしていく人のことだ。
<問いかけの最大の利点は、押しつけがましくないところです。
私の講座で大切にしているあり方は、まずは「自分自身を認め愛する」ということです。そして自ら溢れる愛とエネルギーであなたのすぐそばにいる人やお客様を幸せにする。お客様だけが幸せになるのではなく、「お客様と共に幸せになる」ということが、私の人生に課せられたテーマだと感じています。質問を学んで、自分の果たす役割、そしてビジョンが見えました。そのビジョンとは「どんな障害や病があっても、人生最期の瞬間まで自分らしく生きられる世の中をつくること」。医療職や介護職に従事している皆さんなら、きっと私の気持ちをおわかりいただけると思っております。>
本書はまず自らが信頼され愛されるリーダーとなるために、次の6つの条件を挙げている。
・信頼する
・認める
・Iメッセージ
・リクエストする(要求を伝える)
・信じる
・自分を満たす
さらに「自分会議」という自分を振り返るための時間を持ち、最近嬉しかったこと、うまくいったことをお気に入りの手帳に書き出していくことをすすめている。
そうすることで、脳がポジティブになり、1日が楽しくなる。自分自身を認め愛することから、リーダーの資質は養われていくというのだ。
そして、リーダーとして現場で実際に使える、スタッフへの問いかけの方法を紹介。
・スタッフに気づきを与えたい時、会議で意見を引き出したい時の問いかけ
・スタッフが言い訳をする時に行う問いかけ
・スタッフの成長をサポートし自信につなげるための問いかけ など
これらの問いかけは命令指示ではなく、スタッフ自身が考えて答えを見出すことができるような質問だ。本書内では具体的な会話例を挙げて、どのような表現が効果的なのか、不適切なのかを解説していてわかりやすい。
さらに、ワークシートが随所に載っており、実際に書き込んでいくことで読者の問題点や考えがまとめられるように構成されている。
リーダーのためのものとされているが、リーダー以外の介護職にとっても、また、介護職に限ることなく、多くの人が利用できる内容である。
「自分自身を認め愛する」ことが基本であると説く本書は、周りに気遣いすぎて疲れ果てている自分自身を気遣うことの大切さを気づかせてくれる。
本書を読んで、肩の力を抜いて自分を内省し、働く力をアップしてはいかがだろうか。
著者プロフィール
谷本 あゆみ(たにもと・あゆみ)さん
医療福祉の質問家。愛のといかけカード開発者。小学校の時に24時間テレビ「愛は地球を救う」に感銘を受けて福祉の道に進む。地元の高齢者福祉施設で人事労務管理の仕事に11年携わるが、過労でメンタル不全となり休職。復職後、同施設で一人の高齢者との運命的な出会いによりケアマネジャーに転身。さらに、コーチングや心理学を学び、その学びと自身の経験を生かしたコミュニケーションツール「愛のといかけⓇカード」を、クラウドファンディングを使って開発。2014年に、ケアに携わるすべての人に向けたマインド育成事業をスタートさせた。