■書名:相談援助職の「伝わる記録」:現場で使える実践事例74
■著者:八木 亜紀子
■出版社:中央法規出版
■発行年月:2019年8月
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きちんと伝わる記録が書けるようになる!事例で学ぶ介護現場の記録のコツ
記録の作成に苦手意識を持つ介護職は少なくないだろう。ただでさえ多忙な介護現場で、記録の質まで問われる時代でもある。
目指すべきなのは、誰にとってもわかりやすいこと。本書はそのためのコツを教えてくれる。
本書では、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー、施設職員、カウンセラーのように、相談業務に関係する人を広く対象にしているが、中でもケアマネジャーに係わる内容は豊富だ。
自分が直接担当している業務以外の事例であっても、学べることは多く、全体を通して無駄はない内容となっている。
本書の構成は次のとおり。
第1章 相談援助職として書く記録
第2章 専門職として適切な表現集
第3章 記録の実際74 事例と解説
第1章「相談援助職として書く記録」には、
記録の目的や記録されるべき内容、見た目などの
記録の体裁などがまとめられている。第3章で具体的な事例を見ていくにあたり、第1章では『書き方のエッセンス』を学ぶことができる。
特に基本となるのが、記録は「自分のための備忘録ではなく第三者に読まれるためのもの」であり、「専門職が第三者と情報共有するためのツール」であるということだ。しっかり意識しておきたい。
第2章「専門職として適切な表現集」では、ジャンルごとに次のような
表現の言い換え方が示されている。
×太っている → 〇ふくよか、がっしりしている
×歩行の異常 → 〇すり足で歩く、極端にゆっくり歩く、など具体的に
×べらべらしゃべる → 〇発語が途切れない
×自殺念慮あり → 〇「死にたい」と発言、など具体的に
第3章「記録の実際74 事例と解説」は本書の中心的部分となる。74もの事例が取り上げられているので、自分が求めている内容もきっと見つかることだろう。以下はその一部だ。
・自宅での転倒
・高齢者虐待の疑い
・受診同行
・サービスの利用状況について
・関係者に関する苦情
・家族との面接
・認知症患者のアセスメント
・家族との電話
・サービス担当者会議のまとめ
・居宅サービス計画書
・支援終了の相談
・本人の体調不良と医師との連携
・介護で追い詰められた家族
・住宅改修完了検査の記録
見開き2ページで、左ページに「元の記録」、右ページに「修正例」が並んで示されているので、比較がしやすい。
全体に関するキーポイントや修正アドバイスが上部に示され、個々の文章の修正については、一つずつ欄外に「ニュートラルな記載を心掛ける」「具体的に状況を説明する」などの説明が添えてある。
どのようにすれば、よりわかりやすい記録になるのかが一目でわかるのがポイントだ。
いずれの事例も、実際のケアマネジャーの介護支援経過記録、病院で医療相談員に従事しているソーシャルワーカーや看護師の記録などをもとにしているそうだ。リアリティのある事例ばかりで、それらを使って修正ポイントが確認できるので、自分で書く際にも参考にしやすい。
記録を書くための技術を効率的に身につけるには、『多くの記録に触れること』だという著者の考え方どおり、本書には多くの事例が掲載されている。
うまく活用して、スキルアップにつなげていきたいものだ。
著者プロフィール(引用)
八木 亜紀子(やぎ・あきこ)さん
福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター特任准教授。プリンシプルコンサルティング株式会社プリンシプル職場の心理学研究所所長。アアリイ会社代表取締役。米国カリフォルニア州臨床ソーシャルワーカー、精神保健福祉士、公認心理師、国際EAP(Employee Assistance Program)協会認定EAプロフェッショナル。現在は、福島県における被災者支援と相談援助職に向けた記録の研修、組織へのメンタルヘルスやハラスメントに関する研修やコンサルティング等に携わる。