■書名:笑う介護。
■著者:松本 ぷりっつ/岡崎 杏里
■出版社:成美堂出版
■発行年月:2007年9月25日
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苦労も不安もあるけど、笑いもある!介護と向き合う家族のリアルな姿とホンネが分かる
介護職にとって、利用者はもちろん、その家族とのコミュニケーションも大切だ。
しかし、施設勤務だと、家族と直に接することが少ないため、家族の本音を知る機会は、あまりないのではないだろうか。
著書である岡崎杏里さんが体験した「介護生活」を綴った本書には、家族のとまどいや悩み、そして次から次へと起こるトラブルを「笑い」で乗り越えた、リアルな本音がつまっている。
岡崎さんの生活が一変したのは、彼女が23歳の時。父親が50代という若さで認知症になってしまう。さらに母親も卵巣ガンで入院。自宅では認知症で「トンチンカン」になってしまった父親の介護、病院では母親の看病、しかも岡崎さんには仕事もある…。
あらすじを見ると、とても「重い」のだが、岡崎さんの語り口は軽快で、両親やそれをとりまく人々への愛情とユーモアにあふれている。介護生活のエピソードを紹介する松本ぷりっつさんの漫画もコミカルで、ツラいエピソードもさらりと、時には笑いながら読めてしまうのだ。
本書の中には、家族の介護を経験した人だからこそ分かる、さまざまな悩みが登場する。
最初は一人で父親の介護をしていた岡崎さんだったが、限界を感じ「介護保険」を利用することを考え始める。しかし、世間体を気にする母親が反対。なんとか説得したものの、今度は居宅介護支援事業所を見つけるのにも一苦労。
ショートステイを利用する時も、後ろめたさを感じたり、旅行のように楽しみにしている父親にホッとしたり。
「家族だからイライラする」「家族だから心配でたまらない」という、複雑な感情がさまざまなエピソードを通して語られている。
そして、介護のプロのサポートが、自分の生活のすべてを変えてくれたと岡崎さんは言う。
<彼女たちは私や母が介護に困っていると相談に乗ってくれ、いつも適切なアドバイスを与えてくれる。(中略)彼女たちの支えがあって、なんとか父を在宅で介護できているといっても言い過ぎではないだろう。>
<ショートステイにより、私と母は月に数日だけ介護から開放される。そしてその間に、できるだけ心の電池を充電して、家に戻ってきた父にもっとやさしくなろう……と思うのだ。>
介護サービスを受けるようになっても、家族だからこその悩みや不安はつきまとう。大粒の涙を流すこともある。しかし、岡崎さんがツラい毎日を前向きにとらえることができたのは「笑い」があったからだ。
<病を患ってしまった本人はもちろん、介護者や病人を抱えた家族の暮らしは、その日からガラリと変わってしまう。(中略)でも、意外にも暗い話ばかりではない。多くの人に助けてもらって発見すること。つらい中にもたくさんの「笑い」が転がっていること。また、そんな「笑い」を探すだけで、毎日が少しだけ、楽しくなっちゃったりするのだ。>
介護という未知の世界に立ち向かう家族の気持ちを理解できることはもちろん、トラブルやうまくいかないことに「笑い」で立ち向かう、前向きなパワーをもらえる一冊だ。
著者プロフィール
松本 ぷりっつ(まつもと・ぷりっつ)さん
「ザ・マーガレット」で漫画家デビュー。2005年にブログ「うちの3姉妹」を開設し、大人気に。書籍化された「うちの3姉妹」シリーズ(主婦の友社)は累計47万部超を記録。現在は家事・育児をこなしながら漫画誌の連載を抱える日々 。
岡崎 杏里(おかざき・あんり)さん
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務しつつ、23歳から両親の介護と看病の日々を送る。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作が優秀賞を受賞。現在は「宣伝会議」「プレジデント」などでライターとして活躍中。
※プロフィールは2007年時点のものです。