「アウトカム(成果)評価」による介護報酬加算が新設
「改定率プラス0.54%」を含む、2018年度の介護報酬改定の内容がほぼ固まりました。
以下の4つが大きなテーマとして掲げられています。
1.地域包括ケアシステムの推進
2.自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
3.多様な人材の確保と生産性の向上
4.介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
今回クローズアップするのは、「2.自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」。
この項目には、「アウトカム(成果)評価」という言葉が使われています。
ここでいう「アウトカム評価」とは、リハビリテーションの成果や心身機能の維持・改善を数値で評価すること。訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションについては、要介護者対象のサービスだけでなく、要支援者対象の介護予防サービスにもアウトカム評価を取り入れます。
また、通所介護(デイサービス)には、新たに心身機能の維持に関わるアウトカムを評価した加算が新設されることになりました。
通所介護(デイサービス)では、ADLの維持・改善が評価対象に
注目したいのは通所介護です。
新設される「ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)」という評価の指標に、要介護度ではなく、Barthel Index(バーセルインデックス、以下BI)という機能的評価が用いられることです。
BIとは、世界共通で用いられているADLの評価の指標です。
食事、車椅子からベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの計10項目について、項目ごとに5点刻みで点数化し、その合計点を100点満点として評価するものです。
今回導入される通所介護での「ADL維持等加算」では、以下のような条件があります。
・評価対象の利用者総数が20名以上であること
・評価対象利用期間の最初の月の時点で、要介護度3~5の利用者が15%以上含まれること
つまり、中重度者を対象としたADLの維持・改善に対する評価なのですね。
加算対象となるかどうかの評価方法については、下記の通りです。
1.評価対象期間の初回(事前BI)とその6ヶ月後(事後BI)に、BIを測定する。
↓
2.「事前BI」と「事後BI」の差を算出し、これを「BI利得」とする
(「事後BI」-「事前BI」=「BI利得」)。
↓
3.「BI利得」の上位85%の利用者について、その数値が0より大きければ「1」、0より小さければ「-1」、0なら「0」とする。
↓
4.利用者全員分の数値を合計した数値が0以上の場合、加算対象となる。
ADLの維持・改善は評価されても、認知症ケアは評価されない
今回の改定によって通所介護で新設されるこの加算では、ADLの維持・改善のみが評価の対象とのことです。
これに対して、認知症ケアの成果が評価されないという批判の声が上がっています(*)。
記事では、身体機能改善に限らない、手間のかかる認知症を持つ人のケアが、この加算の評価対象から除外されることを懸念しているという「認知症の人と家族の会」の副代表理事の声も紹介されていました。
また、介護サービスの評価においては、ADL評価だけでなく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)の評価も必要ではないかという声もあります。
その点は、厚生労働省も重々承知の上で、しかし、適切な評価指標がないことから、先行してADLに絞った「アウトカム評価」を取り入れたということのようです。
限られた財源で運営していかなくてはならない介護保険ですから、費用対効果を考えることは必要です。
サービスの成果をきちんと検証しないことには、ケアプランや提供しているサービスが適切か否かを判断することができません。
とはいえ、生活を支える介護の成果の評価は、投薬の効果を数値で評価するなど、成果を見やすい医療サービスとは違います。
利用者の状況も、ケアプランも、提供されるサービスの内容や質も、介護サービスを受ける方によって異なるため、評価指標を設けることは非常に難しいと思います。
それでも、評価指標が必要であるならば、その方法を考えていかなくてはなりません。
評価される立場にある介護職も、「こんな指標で評価してほしい」という、よりよい案を考えていく必要があるのかもしれませんね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*長寿リスク社会 介護報酬改定の課題/下 成果評価、認知症測れず(毎日新聞 2018年1月26日)