16時間以上の長時間勤務、ワンオペ夜勤が介護施設の7割以上
施設で勤務する介護職にはつきものの夜勤。
3交替制と2交替制がありますが、いまや2交替制が約9割。しかも、施設全体の約7割、2交替制の施設に限ると約8割から、16時間以上の長時間勤務という回答が得られたことが、日本医療労働組合連合会の調査で明らかになりました(*)。
深夜を通しての半日以上の勤務、終盤はもうろうとしてしまいそうです。
日本医療労働組合連合会の調査結果によると、月4回以上夜勤をしている職員の割合は4割強です。
看護師には、1992年に制定された看護師確保法に基づく基本指針として、当時、主流だった3交替夜勤について、「複数夜勤体制・月8回以内の夜勤体制の構築」が努力義務として掲げられています。しかし、介護職については、こうした指針はありません。
このため、グループホームでは、夜勤回数が月に8回を超える職員が、グループホーム職員全体のうち約1割。
10回以上という職員も約3%いるとの回答でした。10回以上とは、1ヶ月の3分の1以上が夜勤ということです。
そのような勤務体制で、プライベートな生活を大切にできるのか、心配になります。
また、勤務と勤務の間が12時間以上確保されているかという質問については、約2割が確保されていないとの回答です。夜勤明けの翌日に勤務があったという回答も約35%。介護施設での厳しい労働環境が窺えます。
さらに、夜勤の人員配置では、複数夜勤体制となっている施設は約3割。グループホームや小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護は、全て1人体制との回答です。
飲食店では、夜勤1人体制は「ワンオペ」と呼ばれ、過酷すぎるとの指摘から、夜勤1人体制を改めた企業もありました。しかし介護業界では、時には命に関わる事態が起こりうる業務であるにもかかわらず、今も「ワンオペ」の職場が約7割に上ります。
規模の小さい居住施設で複数夜勤体制にするのは、人件費の関係で難しいという実態はあると思います。しかし、そのために、夜間、急変や事故におびえながら勤務に就いている介護職員は、今も多いのではないでしょうか。
介護職のことも利用者のことも考えた夜勤体制を
一方、夜勤手当は、正規職員では最高額が1万600円、最低額は3000円。ずいぶん差があるのだなと思います。全体の平均額は6124円となっています。この金額が適正なのかどうか。意見が分かれるかもしれません。
日本医療労働組合連合会の調査によると、回答があった介護施設の約半数で、非正規職員も夜勤を担当しています。非正規職員では、夜勤手当の最高額がグループホームで2万円というところがあります。調査にはありませんが、夜勤専従職員を雇用している施設も増えてきたと聞きます。
ある施設では、夜勤は夜勤専従の職員に委ね、昼勤の正規職員の夜勤を一切なくしました。これにより、正規職員の定着率が上がったそうです。求人面でも、「夜勤がない」ことは応募者への大きなアピールポイントになります。
一方、夜勤専従の職員も、募集すると予想外に多くの応募者があったそうです。いいことばかりのようですが、この体制を続けると、夜勤を経験したことがなく、夜間の入所者の様子を知らない職員が増えていくことになります。
かつては、1日24時間の入所者の様子を、見て、介護を経験してこそ、初めて一人前の介護職だと言われていました。そうした考え方は、これからは過去のものになっていくのでしょうか。
介護の仕事において、夜勤は様々な課題のある大切な問題です。どのような夜勤体制がいいかは、一概には言えません。
しかし、利用者にとっても働く介護職にとっても、どのような体制がベターなのか。現状の夜勤体制の課題とメリットは何なのか。それぞれの施設でじっくりと話し合ってみることも必要ではないでしょうか。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*介護職員 激務明らか 2交代、夜勤16時間勤務7割 (毎日新聞 2018年4月6日)