高齢者の熱中症は「徐々に悪化」「知らない間に重症化」
今年は梅雨の間、湿度の高い、蒸し暑い日が続きました。
気温と湿度が上がると、熱中症になる人が増えます。
高齢者の場合、当日の暑さによって熱中症となるよりも、前々日からの暑さが蓄積することによって、熱中症を起こすリスクがより高くなることが明らかになりました(*)。
東京都23区内で起きた不自然死について、すべての遺体の検案・解剖を行っている東京都監察医務院の調べでは、熱中症での死亡者の大半は65歳の高齢者。男性は70代、女性は80代に、熱中症で亡くなる人が最も多くなっています。
大多数は屋内で亡くなっており、気温の高い日中だけでなく、夜間に亡くなる人も少なくありません。
高齢者は感覚が鈍くなりがちで、暑くてもそれを感じ取ることができなかったり、喉が渇いていても気づかなかったりすることがあります。
そのため、重症化するまで気づかないことも多く、高齢者が熱中症にかかると、中等症や重症になる人が半数以上であることが明らかになっています。
高齢者が前々日からの暑さの蓄積で熱中症になるというのは、数日かかって徐々に症状が悪化するためです。高齢者がかかる熱中症の場合、病院で治療しても、なかなかよくならないという特徴もあります。
それだけに、高齢者が熱中症にならないよう介護職をはじめとした周囲の人が気をつけたいですし、熱中症に早く気づいて早く対応することが大切です。
実は、気温が24~25度とそれほど高くなくても、湿度が高いと熱中症にかかることもあります。これは高齢者に限ったことではありません。
自分自身のためも含めて、熱中症が疑われるときの対処方法は、知っておくとよいでしょう。
出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」
重症化すると命に関わることも。「濡れタオル」なども熱中症予防に効果的
高齢者の中には、経済的理由でエアコンを使いたくないという人もいます。血液循環が悪く、冷房した室内にいると体が冷えるからと、冷房を使いたくないという人もいます。
こうした人の中には、熱中症の怖さを十分理解できていなかったり、「正常性バイアス」と呼ばれる心理で、自分が熱中症になるはずはないと、自分にとって都合の悪い情報を無視してしまったりする人もいるかも知れません。
熱中症への危機感が乏しい人には、
熱中症は重症化すると命を落とす場合もあること、高齢者は特に熱中症にかかりやすいこと、自分で異変に気づいたときには動けなくなっている場合もあることなどを、わかりやすく伝えることが必要です。
なかなか耳を貸さない人には、医師から話をしてもらうのもよいでしょう。
経済的問題でエアコンを使わない人であれば、日差しがきつくなる前に、例えば、公民館や図書館、ショッピングセンターなど、冷房が効いている施設に行って、
日中の暑い時間帯を涼しい場所で過ごし、少し暑さが和らぐ時間に帰宅する、という提案をしてもいいかもしれません。
体が冷えることを嫌う人であれば、エアコンを使わずに熱中症を防ぐ方法を伝えましょう。
たとえば、常温や湯冷ましでもいいので、
水分を十分にとること。高齢者の場合、
喉が渇いたと感じなくても、定期的に水分をとることが重要です。
エアコンを使わずに熱中症を予防するためには、
「窓を開けて風を通すこと」「扇風機やうちわを使うこと」のほか、濡らしたタオルを首に巻いたり、暑いと感じたら手を水に付けたり、
体にこもった熱を下げやすい箇所を冷やすことも効果的です。
冷蔵庫に
冷やした濡れタオルを常備して、暑いと感じたら首や脇の下をふくのもよいでしょう。
夜間の熱中症を防ぐため、
寝る前にはコップ1杯の水を飲むこと。
枕元に水が入ったペットボトルを置いておくことも勧めておきたいものです。
高齢者の生活状況をよく知る介護職にこそ、暑い夏を高齢者が無事乗り切れるよう、今年も支えていただければと思います。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>
*高齢者、猛暑3日で危険増大=熱中症搬送者数を予測-名工大など(時事通信社 2019年7月17日)