デイ・ショート858施設が休業!自宅で過ごす高齢者に影響は?
新型コロナウイルスの感染拡大で、デイサービスには、集団感染によって休業したり、感染リスクを避けるために休業したりするところが多数出ました。
4月下旬の厚生労働省の発表では、全国で858のデイサービスとショートステイが休業していたそうです(*)。
このため、デイサービスへの通所を休止し、自宅で過ごすことになった高齢者には、心身に変調を来すなど、影響が出ているそうです。
デイサービスには、機能訓練や調理、畑仕事に取り組むなど、独自の特色を打ち出しているところもあれば、食事や入浴を提供し、おしゃべりなどを楽しみながら夕方まで過ごす「滞在型」と呼ばれるところもあります。
「滞在型」のデイは、
「自宅で一人で過ごしてもらうのは不安がある」
「デイに行くことによる刺激で認知機能の低下を抑えたい」
など、本人より
家族等、周囲の要望に応える形で利用されているケースが少なくありませんでした。
通所すること自体が目的化しているケースもあり、「滞在型」のデイは、機能訓練によって下肢筋力が向上するような、目に見える通所効果は測りにくかったと言えます。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で通所を休止したことにより、前述のように、利用していた高齢者には様々な影響が見られています。
ケアマネジャーからは、「新型コロナウイルスによる休業で、滞在型デイの通所効果の認識を新たにした」という声も聞きました。
新型コロナウイルスが、デイサービスが利用者に与えていた効果を明らかにしたのです。
介護施設のオンライン面会は難しい?
一方、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど多くの入居施設では、家族等、外部からの面会の制限が3ヶ月以上続いています。
入居者の様子がわからないことを不安に思う家族からの要望などを受け、1ヶ月ほど前からは、「オンライン面会」を開始する施設が増えました。ZOOMやSkype、LINEのビデオ通話など、
顔を見ながら話せる通信システムの導入です。
しかし、「オンライン面会」を導入した施設に聞くと、これは必ずしもうまくいってはいないとのこと。家族が、直接面会に来ていた頃にはよく話をしていた入居者も、
画面の向こうにいる家族の顔は認識できないケースが多いというのです。
家族による面会がなくなったことで刺激が減り、認知機能が低下するケースが増えていることを、この施設職員は心配していました。
当たり前の“介護”が見直されるとき
変化が少ない施設での日常生活に、外から家族が訪れること。
自宅から、デイサービスに出かけていくこと。
あるいは、在宅での生活に訪問介護のヘルパーが訪れること。
それは、日常の中では、当たり前のことと感じている事柄でした。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、「日常」が損なわれ、「当たり前」を失ってみてはじめて、その意義が見えてきています。
「日常」を形作る「当たり前」の力を、前出のケアマネジャーのように、改めて感じたという介護職の方も多いのではないでしょうか。
何気ないように思えることも、地道に続けていれば意義があることが、こうして改めて認識されるようになったのは喜ばしいことです。
新型コロナウイルスの感染拡大で、当たり前の日常が損なわれ、ついマイナスなポイントばかりに目が向きがちです。しかし、実はそんな中でも、評価できるプラスのポイントもあるものです。
緊急事態宣言が解除されても、感染予防への意識を緩めることができない介護職は、ストレスがたまる日々が続きます。
そんな日々の中でも、意図してプラスポイントに目を向けることで、何か見えてくるもの、気づけることがあるかもしれません。
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介護職に慰労金支給!ウィズコロナ時代は介護業界が変わるチャンス?
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*デイサービス、相次ぐ休業 高齢者、生活乱れ変調(毎日新聞 2020年5月9日)