人事異動は必要なの?という気もするけれど…
新年度になって1か月。新しい仕事に就いた人、転職した人、人事異動で職場が変わった人…みなさん、少し慣れてきた頃でしょうか。中でも、自分で選んで職場を変えたわけではない人事異動組の人は、仕事に慣れるだけでなく、気持ちを切り替えていく難しさもあったことと思います。
そもそも、利用者との関係性を作っていくことが大切な介護の現場で、人事異動は必要なの? そう思う人も少なくないと思います。認知症を持つ高齢者にとって、自分を取り巻く環境が変わることは大きなストレス。当然、職員の異動の影響も大きく、職員の異動のあと、利用者の状態が不安定になることはよくありますよね。
それでもなぜ人事異動をするのでしょう?
一つには、欠員が出た、その職場の人間関係が良くないなど、消極的な理由。人が足りなかったら、異動で補わざるを得ないこともありますよね。
もう一つには、人材育成上、いろいろな職場を経験させたいという積極的な理由もあります。そんな配慮はしてくれなくていいから、同じ職場で働かせてほしい、という声もあります。介護のような対人援助の仕事の場合、利用者と信頼関係を作らないと仕事がスムーズに進みません。異動すれば、また一から利用者との人間関係を作らなくてはなりませんから、異動のストレスは他の仕事より高いかもしれないですね。
人事異動は関係をリフレッシュするいいチャンス
一方で、介護に限らず、どんな仕事でも、長く同じ職場で勤務しているとどうしても「慣れ」が出てきます。慣れることで仕事が効率よく進むというプラス面もあります。しかし、「なれ合い」で仕事がいいかげんになったり、人間関係が固定してしまったりというマイナス面もあります。プラスよりマイナスの方が多くなったら、人事異動でゼロに戻す。そんな考え方があるのは自然なことでしょう。
職場の人間関係は、一度固まるとなかなか変えるのが難しいものです。頼れる職員がいる職場では、その人を当てにしてしまい、他の職員の成長が遅れる場合もあります。また、うっかりミスが多い職員などは、一度「ミスが多い」というレッテルを貼られ、周囲からそうした目で見られるようになると、本人も萎縮してしまいます。そのために、ますますミスをしてしまうことも。それが続くと、悪循環に陥り、人間関係も悪くなります。そういう場合は、人事異動で関係をリフレッシュした方がうまくいく場合もあります。プラスの評価にせよ、マイナスの評価にせよ、あまり固定しすぎない方がいいのです。
新しい技術や知識が身につき、自分に幅が出る
人事異動が効果的な理由は、まだあります。利用者と信頼関係ができて介護がスムーズにいくということは、プラスばかりではありません。それが行き過ぎて、「その人でなければダメ」という関係になると、利用者にとってはかえってマイナスです。利用者と関係の良い特定の職員は、常にそばにいるわけではありません。いなくなったときに必要以上に大きなショックを受けることがないよう、ほどほどに関係の良い職員が複数いる方が、利用者にとってはリスクが小さくてすむのです。気むずかしい利用者と信頼関係を結ぶことができたら、自分がいないときに他の職員がうまく対応できるよう、間をつなぐ役割を果たせるといいですよね。
慣れ親しんだ職場からの異動を告げられたら、ショックを受け、ストレスを感じるのは当然のことです。新しい職場に合わせて、新たな知識や技術を身につけるのも大変ですよね。
しかし、身につければ、それだけ自分に幅が出て、仕事での対応力が高まります。異動はスキルアップのいいチャンス。そう気持ちを切り替えて、取り組んでいけるといいですね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・介護福祉ライター)>
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