近隣の新型コロナ感染情報は適切に得られていますか?
新型コロナウイルス感染対応において、緊急事態宣言が解除され、このウイルスと共に暮らす“ウィズ・コロナ”の生活が始まりました。感染は治まりつつあるように見えますが、今も各地で感染者が確認され、クラスターも発生しています。
先日、あるデイサービスの代表に新型コロナウイルス対応について話を聞いたとき、地域の事業者間での情報共有についての話があり、危機感を覚えました。
というのもその地域では、一つのデイサービスで感染者が発生しても、
その情報が適切に近隣介護事業者に伝わるルートがないと聞いたからです。
利用者さんの感染状況がわからず、複数のデイで集団感染!
2020年3月に名古屋市内の複数のデイサービスで集団感染が発生したとき、複数のデイサービスを併用する利用者が媒介者となり、感染を拡大することになりました。
私が代表に話を聞いたデイサービスも、類似した状況が発生したそうです。
しかし、このデイは、早い段階で、「善意の情報提供者」から感染情報を得ることができました。そのため、媒介する恐れがある利用者には利用を自粛してもらい、他の利用者に対しても迅速な対応をとることができたそうです。
そのデイサービス代表は、情報提供がなければ、対応は遅れただろうと語ります。
関連記事:
介護職に慰労金支給!ウィズコロナ時代は介護業界が変わるチャンス?
事業所の「意識の差」「情報格差」が新型コロナ対策のカギに
新型コロナウイルスは、発症の2~3日前から高い感染力を持つと推定されています(*1)。
これが事実であれば、感染者が確認された時点で濃厚接触者は自宅待機とし、感染拡大を防ぐことが大切です。
濃厚接触者が、感染力が高い可能性があるという認識を持たずに行動することで、感染を拡大するリスクが高まるからです。
それでも、このウイルスの感染を完全に防ぐことは極めて困難です。
であれば、感染が起こることを想定し、
自分や身近な誰かが感染した場合の対応をシミュレーションしておくことが大切になります。
重症化リスクを持つ高齢者を支援している介護事業者にとって、その第一歩は、
『近隣での感染情報を早期に入手すること』です。そのため、地域での情報共有の仕組みが必要です。
もちろん、個人情報の問題があり、詳細な感染情報をオープンにすることは難しいでしょう。
しかし、どのデイサービス、あるいはショートステイ、訪問介護等のサービスの利用者に感染者が発生した、という程度の情報は、迅速に共有される仕組みが必要です。
他の事業者との連携が良く、情報が集まりやすい事業者もいます。一方で、そうしたことが得意ではなく、情報の入手にタイムラグが生じやすい事業者もいます。
地域でそうした情報格差が生じ、利用している事業者の連携体制や問題意識によって、利用者が不利益を受ける事態は避けなくてはなりません。
関連記事:
感染者発生に備えて、動線や衛生資材の検討を!【介護現場の新型コロナ対策】
地域のネットワークで新型コロナの拡大防止を!
新型コロナの感染情報を知ることは、利用者のためであると同時に、事業者の経営を守ることにもつながります。
全国約2000事業所を対象に行った調査で、新型コロナウイルスによる事業所の運営への影響について、次のような結果が示されています(*2)。ウイルス陽性者・濃厚接触者が出た事業所のうち、
4割強が事業の縮小、3割弱が休業したことが明らかになったのです。
感染、濃厚接触の発生は、事業所の経営にも大きな影響を与えます。
梅雨に入り、これから大雨による被害も想定されます。
さらには、台風や地震など自然災害のリスクも考え、地域の事業者で地域の利用者を守るための情報共有など連携ネットワークを構築していただきたいと思います。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*1
感染力はCOVID-19発症の2~3日前から高い(日経メディカル 2020年4月30日)
*2
新型コロナウイルス感染症が介護・高齢者支援に及ぼす影響と現場での取組み・工夫に関する緊急調査【介護サービスを提供する法人調査】調査結果報告書(一般社団法人 人とまちづくり研究所 2020年6月2日)