介護職の職場満足度は49.5%
2018年12月、「介護サービス業で働く人の満足度調査」の結果が発表になりました(*)。
これは、⽇本の介護サービス業の就業⼈⼝を増やすためのプロジェクト「HELPMAN JAPAN」が、現任の介護職の人750人、過去に介護職経験がある人250人を対象に、2018年8月に実施した調査です(運営:株式会社リクルートキャリア)。
現在勤めている介護施設(過去に介護職経験がある人は、最後に勤めた介護施設)の仕事に「満足している」と答えた介護職は49.5%。
ただし、そのうち、「とても満足している」という回答は4.2%、「満足している」が11.6%、「ある程度満足している」が33.7%でした。「満足している」といっても、その満足度には濃淡があるようです。調査結果の分析では、この3つの回答をひとまとめにして、「満足」と分類しています。
一方、現在勤めている介護施設、あるいは最後に勤めた介護施設の仕事に「満足していない」と答えた介護職は、29.9%。
「あまり満足していない」という回答が14.0%、「満足していない」が6.8%、「まったく満足していない」が9.1%でした。調査結果の分析では、この3つの回答をひとまとめにして「不満」としています。「どちらともいえない」という回答は、20.6%でした。
現職の介護職のうち、介護施設での仕事に「満足」と回答した人に、『現在勤めている介護施設で働き続けたいかどうか』の意向を尋ねた質問では、「働き続ける意向がある」という回答は79.7%でした。
こちらも、働き続けたいという意向には濃淡があり、「強くそう思う」という回答が9.9%、「そう思う」が26.5%、「ある程度そう思う」が43.4%となっています。
今の職場で働き続けたいと強く思う人は、1割に満たないのですね。
現在の職場に「満足」している人でも、働き続ける意向について「ある程度そう思う」という回答が4割強を占めているこの調査結果には、介護業界の人材の流動性の高さが表れているように思います。
研修受講者には仕事を継続する意向を持つ人が多い
介護職の人が同じ施設で働き続けようと思えるかどうかは、研修を受講しているかどうかと関係があるかもしれません。
(HELPMAN JAPAN「介護サービス業で働く⼈の満⾜度調査」プレスリリース(株式会社リクルートキャリア)より転載)<クリックで拡大>
「介護技術に関する研修」や「それ以外の研修」の両方を受講している人に、働き続けようという意向を持つ人が多いことが、この結果からわかるからです。反対に、どちらの研修も受講していない人は、働き続けようという意向を持つ人が少ないことも明らかです。
入所施設の場合、交替勤務の関係で、全職員に研修を受講してもらうには複数回の開催が必要となり、実施する側にとっては負担が大きくなります。受講する職員にとっても、勤務がオフの時に時間を割き、研修を受講するのは負担になるかもしれません。
それでもやはり研修は重要です。
施設で繰り返される日々の生活を支援していると、よりよい介護を提供するために何をするべきかという視点と意欲を持たなければ、何も考えず、「作業」のように目の前の仕事をこなしていくルーティンワークに陥る恐れがあります。
研修を受講することが大切なのは、介護技術等を学ぶだけでなく、日々の介護がそうしたマンネリに陥るのを防ぐ意味もあります。内向きになりがちな視点を変え、より広い視野で介護の仕事に取り組むきっかけにもなります。
忙しい介護の職場では、介護技術も、利用者と相対するときの心構えも、ゆっくり学べない場合もあります。
悩みやストレスを抱えていても、それを相談する相手も時間もないという声もよく耳にします。
研修に参加することで、抱えていた悩みそのものへの解決策が得られなくても、新しい視点を身につけることができるかもしれません。異なる考えの介護職と接することで、自分自身の中に「風」が吹き込むような感覚が得られることもあります。
そうした経験が、悩みやストレスを軽減することもあります。
研修受講経験のある介護職の人に、現在の仕事を続けたいという意向を持つ人が多いのは、そうしたことが影響しているのかもしれません。
受講のチャンスがあるなら、研修を上手に活用していただければと思います。
<文:社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター 宮下公美子>
*HELPMAN JAPAN「介護サービス業で働く⼈の満⾜度調査」