毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護業界にも技術革新の波」という話題を紹介します。
介護補助器具の進歩
介護の仕事は人と人の触れ合いが命。
手を握ったり肩を支えたりといった直接的なサポートや、会話を交わしたり要望を聞いたりというコミュニケーションが大切だ。
そんな介護現場は最先端技術とは無縁かと思われがちだが、介護の世界でも技術革新は行われている。
介護職のイトウさんが働く都内の介護付き有料老人ホームには、先日、ある研究チームが開発した介護補助器具が試験導入されたという。
介護職の悩みの種は「腰痛」
イトウさんは介護業界で働き始めて約10年の40代の女性。朗らかな性格で、入居者からも同僚からも信頼が厚い彼女は、お年寄りと日々触れ合いを持てる介護の仕事をとても気に入っており、「可能な限り一生続けたい」と語るほどだが、大きな悩みがある。
それは
腰痛だ。イトウさんはいう。
「介護業界に入った時、先輩に『腰痛だけは覚悟しておいてね』と言われました。そのため、腰にコルセットを巻いたりして気を付けていたのですが、入浴介助をしている時に足が滑っておかしな体勢になってしまい、生まれて初めて腰痛というものを経験しました。
介護の仕事は、利用者さんがベッドや車椅子に移動するときの抱え上げや、前かがみになったりかがんだりする作業で腰痛になるスタッフがとても多く、腰痛は“お友達”です」
介護職員に腰痛が多いという状況は施設側も理解しているが、先日、“救世主”が現れたそうだ。
重いものが持てる?!サポート器具を試着!
イトウさんが働く施設で先日、ある大学の研究チームが開発している「重いものを持ち上げるのをサポートする装置」が貸与されたのだ。
施設と提携している病院の医師から「試してみませんか?」という申し出があったのだというその装置。
試験導入にあたっては、医師、研究チームのスタッフ、理学療法士などが集まり、開発チームによるデモンストレーションの後、スタッフ同士で練習を兼ねて器具を装着。イトウさんも試してみたという。
「スタッフたちは、最初は『SF映画みたいだね』とおどけていましたが、いざ装着してみると、腰への負担が大変少なく、『これはいい』『ラクだね~』といった声が次々と上がりました。
研究チームのスタッフによれば、歩行アシスト機の開発に取り組んでいるチームもあるそうで、近々そちらも試すことができそうです」
こういった器具を使えば、家庭での“老老介護”が可能になったり、歩行が難しいお年寄りでも歩けるようになったりといった様々なメリットが考えられる。
サポート装置の貸与は1日限りだったが、スタッフ間ではこんな話題になったそうだ。
職員の負担が軽くなれば、もっと良いケアができそう
「器具を試している時は、ついつい『これがあったら仕事がラクになるよね』と、自分たちのことばかり盛り上がってしまいましたが、スタッフがこういった器具を使うことで、サポートを受ける側のお年寄りも、より手厚くサポートを受けられるようになるわけです。
費用の面で、今すぐ導入が進むわけではありませんが、施設長はすっかり興味津々で、『今度○○で開催される福祉機器の展示会に行ってくる』と話しており、スタッフも皆『もっと良い機械があったら、買ってきて下さい!』と、なかば冗談、なかば本気で言っています」
いたずらに機械に頼るのは慎まなくてはいけないが、スタッフとお年寄りの双方に笑顔がもたらされるなら、最新器具の導入は有効な投資だ。
どれだけ技術が進歩しても、介護の現場から人間がいなくなることは考えられないが、働く人間の負担を軽くする技術の開発は確実に進んでいるようだ。
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