毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ヘルパーになってせっかちが改善」という話題について紹介します。
自分で自覚があるほどのせっかち
どんな人にでも必ずあるのが「短所」。面接などでは自分の短所を聞かれることも多く、それにどう答えるかで求職者の自己分析能力が試される。そんなとき、多くの求職者が短所としてあげるのが「せっかち」だ。
面接では、「自分の短所はせっかちなこと」と答えたうえで、裏を返せば「決断力がある」「行動力がある」などと長所に繋げるのが“王道”だが、せっかちすぎるのは治せるものなら治したいもの。自ら「極めつけのせっかちだった」と語るTさんは、訪問ヘルパーとして働くうちにせっかちな性格が改まったという。Tさんはこう語る。
「自分でも分かっていたんですけど、僕はとにかくせっかちでした。エレベーターに乗る時は、エレベーターが来るのを待ちながら『上』『下』のボタンを連打し、乗ったら乗ったで『閉まる』のボタンを連打していました。横断歩道では赤信号が変わるか変わらないかの内に歩き出し、また、電車が数分遅れただけでイライラ……。テレビを見る時もCMを見たくないので、見たい番組は予め全部録画し、CMを全部飛ばして1.5倍速で見ていました」
ところが今では、まるで悟りを開いたかのように、せっかちな性格は改まったのだという。病的なせっかちだったTさんに何が起こったのか?
お年寄りの動きを見て気がついたこと
「例えば90代の利用者さんと一緒に買物に出かけると、自分なら2~3分で着く距離を、お年寄りは10分も15分もかけてゆっくりゆっくり歩きますよね。そしてレジに行って精算する時も、値段を聞いてから財布を出し、小銭を探すのに数十秒かかり、その後にレジの人に話しかけたり……。
けれど、私の立場としては、利用者の方を急かすわけにはいきません。そんな“自分とは違う時間の流れ”を利用者と一緒に過ごしているうちに、ふと『自分は今まで何を焦っていたんだろう』って思うようになったんですよね。
以前の自分だったら、『合計額を言われる前になんで財布を出さないんだ!』『後ろに人が並んでるのにおしゃべりするなんて!』とイライラしたと思います。相手に聞こえるように舌打ちぐらいしてたかもしれません。しかし、ゆったりと自分のペースで行動する利用者を見ているうちに、『急いだからってどうなる?』って、ある種の悟りを開いたんですよね」
「イライラすることが少なくなった」というTさんの変化は、家族や友人などにもとても好評なのだそう。こうした変化は、もちろん「Tさんの年齢の変化によるもの」もあるだろうが、Tさんは、悟りを開かせてくれた利用者たちに大変感謝しているそうだ。
公開日:2016/9/15
最終更新日:2019/4/20