毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ヘルパーの仕事がきっかけで家族が命拾い」という話題について紹介します。
訪問ヘルパーの仕事では、主に通院介助をしていたAさん
どんな職業であれ、仕事をしていると、大なり小なり「役得」を経験することがある。お客さんや出入りしている業者から物品やチケットなどをもらったり、イケメンや美人と知り合うチャンスが多かったり、何かが安く買えたりといった経験をした人は少なくないだろう。訪問ヘルパーとして働いている60代の女性・Aさんは、仕事中の出会いがきっかけとなって、「家族の命が救われる」という幸運に遭遇したという。
Aさんは、東京都の郊外で訪問ヘルパーとして働いている女性。子育てを終え、40代になってから訪問ヘルパーになったAさんは、自宅から歩いて数分の事業所に登録しており、訪問先も自転車で通える範囲ばかりという恵まれた環境で仕事をしている。
Aさんは通院介助を担当することが非常に多かったようだ。車椅子を押したり、バスや電車などの公共交通機関を使ったり、時にはタクシーを使ったりして利用者に付き添い、「近所の病院はすべて行った」と語るAさん。頻繁に病院に顔を出すため、受付の女性とも仲が良くなり、利用者が医者の診断を受けている時にはおしゃべりをするようになった。
病院でのおしゃべりが夫の命を救う
Aさんが、ある時、話の流れで
「そういえば最近、ウチの夫が『モノが飲み込みにくい』って言うのよ」
と言うと、受付の女性はすぐさまこう言った。
「旦那さん、お酒は飲む?」
Aさんは咄嗟に言葉を濁したが、実はAさんの夫は大変な飲兵衛だった。Aさんがそのことを告白すると、受付の女性は、
「それじゃあ一回、ウチの先生に見てもらって。先生に言って予約しておいてあげるから」
と言ってくれた。そして夫を病院に連れて行き、検査をしてもらうと、夫は食道がんにかかっていたのだった。
発見が早かったために、Aさんの夫は今も健在だが、医者には「もう少し発見が遅かったら、食道を摘出しなくてはいけなかった」と言われたという。これもすべてはAさんのコミュニケーション能力のたまもの。Aさんは、病院に来るように言ってくれた受付の女性はもちろん、その病院に行くきっかけとなった利用者にも大変感謝しており、事あるごとに「アナタは夫の命の恩人だから」と、言っているそうだ。
公開日:2016/9/8
最終更新日:2019/4/13