毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「勉強嫌いは介護にぴったり?」という話題について紹介します。
「体育会系なら、介護職の素質があるかもしれない?」
安倍晋三首相が「一億総活躍社会」の一環として介護問題をピックアップしたこともあり、介護や介護職に対する関心はこれまでになく高まっている。介護業界が置かれた状況の厳しさを伝えるニュースから、介護が「辛い」「暗い」などのネガティブイメージを持つ人もいる。
しかしあたりまえだが、介護の現場は楽しく、明るいことも多いのだ。介護施設で働く20代女性・Iさんの声を紹介しよう。
バドミントンのスポーツ推薦で高校に進み、全国大会でもかなりのレベルのところまで行ったというIさん。高校を出た後に、資格取得のために専門学校に通ったが、「もともと勉強は嫌いだった(笑)」(Iさん)ため、目標としていた資格の取得を断念。
フラフラしているわけにいかないと思ったIさんは、「ものすごく軽い気持ち」で介護施設の面接を受けて合格し、介護業界に飛び込んだ。
そんなIさんの勤務歴はまだ数年だが、「この仕事は天職です」と語るほど、介護の仕事は水が合ったという。
「まず運動部で育ったのが良かったんだと思います。運動部って先輩が絶対で、敬語を使わないなんてあり得ない。私は勉強はできなかったけど、少なくとも同年代の子よりは敬語の使い方を知ってました。それに、先輩の言うことを聞くのが当たり前の世界で育ったので、利用者が少々無茶なことを言っても、あまり気にならないですね」
一方、彼女の弱点であった勉強や一般教養も、介護の仕事ではかえって良い方向に転んだという。
「介護職は楽ではないけれど、そもそも楽な仕事って…」
「私、本とか新聞とか全然読まないですし、政治とか歴史とか、難しいことはちっとも分かりません。けど、利用者さんのお世話をしていると、『今度の選挙で自民党が……』とか『鹿児島県っていえば旧薩摩藩で島津家が……』とか、難しい話題をしょっちゅう振られるんです。
だから素直に『全然分からないんですよね、そっち方面は』みたいなことを言うと、みんな時間はたっぷりあるから、待ってましたとばかり、すごく丁寧に説明してくれる。まったく興味が無かった戦国武将とか相撲とかにすっかり詳しくなりましたね(笑)」
Iさんは自分で介護の仕事を「天職だ」と語っているが、彼女ほどのコミュニケーション力とバイタリティがあれば、きっとどんな仕事に就いても上手くやっていくことは間違いない。
彼女は「勉強は苦手」「本は読まない」「一般教養がない」と謙遜するが、
「介護業界って、『人手が足りない、足りない』ばっかりがニュースになってますよね。でも、そうしたら『足りないってことはきついんだろうな』ってなって、もっと人が来なくなっちゃうんじゃないですか? 介護の仕事って楽じゃないですけど、楽な仕事って、そもそも世の中にないですよね?」
Iさんの指摘はもっともだ。
机上の知識よりも肌感覚を重視する彼女にとって、人と触れ合う介護の仕事はまさに天職だったようだ。
公開日:2016/3/24
最終更新日:2019/4/6