毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「離職希望のAさんを変えた一言」という話題を紹介します。
いつも転職を考えながら、介護職として勤務していたAさん
どんな職場であれ、出会いというのは大切にしたいもの。
現在、都内の介護付き有料老人ホームで働く男性・Aさんは、かつて介護業界から離れることを切望していたものの、先輩からのあるアドバイスにより、仕事にやりがいを見出すことができたという。
それはいったいどんなアドバイスだったのか?
Aさんが振返る。
「私は高校卒業後、『母がしていたから』という理由だけで、介護業界に進みました。
けれども友達と休みは合わないし、体力的にもキツく、いつも転職を考えていました。
嫌なことがあるとすぐに同業他社への転職を繰り返し、気が付けばキャリアは10年以上になっていました」
その頃のAさんは、与えられたことは完璧にこなすものの、仕事中に笑顔はゼロ。
無表情で黙々と業務をこなして、テキパキと排泄処理や食事介助を行う自分を“プロ”だと思い込み、利用者と雑談を交わす先輩ヘルパーを心の中でバカにしていたという。
しかしある時、飲み会の席で、先輩の女性に突然「Aさん、あなた仕事をしていて楽しい?」と聞かれたそうだ。
あなたが笑顔を見せれば、笑顔が返ってくる!
「今となっては若気の至りなんですが、『楽しくありません。仕事ですから』って答えたんです。
そうしたらその先輩は、『そうよね、楽しそうには見えないわ』と言うんです。
それで『あー、これは“辞めろ”ってことなのかな』と勝手に早合点していたら、その先輩が突然、『あなたね、人間関係っていうのは鏡なのよ』と。
要するに、『あなたが利用者に笑顔を見せなければ、決して利用者から笑顔が返ってくることはない。
あなたが不機嫌そうな態度でお世話をすれば、相手も不機嫌になる。
どうせ働くなら、お互い気持ちが良いほうが良くない?』ということだったんです。
このセリフには本当に衝撃を受けましたね」
それ以来“改心”したAさんは、笑顔で接するように努め、入居者たちと雑談にも興じるようになったそう。「ありがとう」「大変そうだね」と言ってもらえるようになったことで、やりがいが感じられるようになったのだとか。
Aさんによれば、「人間関係は鏡」という教えは恋人や友人、家族などにも“有効”だそうで、かつての自分のような人に出会うたびに、その教えを授けているそうだ。