毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「経営母体が医療法人の老人ホーム」という話題について紹介します。
義母の健康問題に悩んだある介護職
年を重ねると、どうしても避けられないのが病院通いだ。
介護業界には、自らが介護の仕事をしつつ、自宅にもお年寄りがいるという人が少なくないが、都内の介護付き有料老人ホームに勤めるスミコさんもそんな家族状況の一人。
スミコさんは、これまで同居する義母とあまり折り合いが良くなかったが、自らのコネで義母が病院に通うようになったことで、すっかり関係が良好になったという。
スミコさんは、都内にある超高級介護付き有料老人ホームで働く40代の女性だ。
彼女が勤める老人ホームは、23区内という立地ながら、エントランスは大理石、全室完全個室で1部屋あたりの広さが50平米以上という超贅沢仕様。
スミコさんは、その施設でオープニングの時から働いている。
そんなスミコさん一家に持ち上がったのが、義母の健康問題だった。
80代の義母はかねてよりヒザの痛みを訴えていたが、大の病院嫌いで、これまで治療経験はいっさいナシ。
スミコさんは嫁という立場ゆえ、これまで意見することを差し控えてきたが、「歩けなくなれば、面倒を見るのは私だ」と思い、ついに義母にこう言ったという。
「お義母さん、私が良い整形外科医の先生を知っています。すべて手配しますから、病院に行きましょう」
クリニック併設の老人ホームへの勤務で、嫁姑関係も円満に?
スミコさんが勤めている老人ホームは、経営母体が医療法人で、敷地内にはクリニックが併設されているという至れり尽くせりの施設。
「病院が併設されている」という点は、絶好のセールスポイントになっており、これまで入居待ちリストが「空」になったことは一度もないという。
スミコさんは、体の不調を訴える入居者の付き添いで、これまで数え切れないほどクリニックに行っており、医師やスタッフとはプライベートでご飯を食べに行くほどの仲。
医師の腕の確かさもよく知っているので、義母を見て欲しいとお願いすると、「いつでも連れておいで。時間外でも見てあげるよ」と、診察を快諾してくれたのだという。
スミコさんはこう語る。
「お医者さんに特別扱いされたことで、義母の私への評価がすっかり変わりました。
私は言うなれば“裏ルート”を使ったわけですが、やっぱり知り合いに医師がいるというのは心強いですよね。
私は、『経営しているのが医療法人だから』という理由で勤め先を選んだわけではありませんでしたが、『いざという時は、隣りにあるクリニックが診てくれる』という安心感があるからか、これまで働いてきた施設より離職率が低いように思います」
調べてみると、医療法人が経営母体ではなくても、近隣に病院があることを売りにしている施設は少なくない。そういった施設で働けば、家族の病院への送り迎えを通勤・退勤時に合わせることも可能だろう。
そういった視線から勤務先を選ぶ手もありそうだ。