毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「燃え尽き症候群にならない方法」という話題について紹介します。
介護の仕事に燃え尽きて…退職
介護の世界で大きな問題となっているのが
「燃え尽き症候群(バーンアウト)」だ。スポーツの世界でも、引退する選手が「燃え尽きた」という表現をしばしば使うが、まさにその状態のこと。燃え尽きて介護から離職してしまう人は少なくない。
「燃え尽き症候群」とはどんな症状なのか? インターネットの質問サイトに寄せられた質問を見ると、例えばこんな具合のようだ。
「介護の仕事をして1年ですが、いつも疲労感があり、すぐ体調を壊しなかなか治りません。不眠やイライラもあります」
「自分がすりきれているように感じます。利用者に優しく接することができないときもあります」
「介護の仕事をするようになって、気力が湧かず、人間関係にも疲れています」
「いつまでこの忙しさが続くのか…出口の見えないトンネルにいるような気分」
バーンアウトは、アメリカの社会心理学者クリスティーナ・マスラークによると「長時間にわたって人に援助する過程で、心的エネルギーがたえず過度に要求された結果、極度の心身の疲労と感情の枯渇を示す症候群」と定義されている。噛み砕いて言えば、「ストレスと心労で疲れ果てて、やる気が失せる」といったところだろうか。
厚生労働省が2015年2月に発表した「2025年に向けた介護人材の確保」(*)という文書の、「将来の見通しを持って働き続けるためのキャリアパスの整備」という項でも、「一定の経験を積んだ者が、バーンアウトせず、それぞれのキャリア設計に応じた更なる資質向上の機会を得られるよう…(以下略)」と記されており、問題の根は深い。
とある介護施設で、バーンアウト退職者がゼロになった理由
都内の介護施設に勤務し、多くのスタッフを統括する立場のHさんも、過去にはバーンアウトに近い状態で入社数年目の若いスタッフが退職してしまった経験を持つ。そのため、現在は定期的にスタッフのヒアリング作業を実施。また、こんなことを常日頃言っているという。
「まずは、
『休日は十分に休息をとること』です。介護の仕事は体が資本ですし、疲労や寝不足は事故にも繋がります。しっかり身体を休めて欲しいと伝えています。
それから、
『あまり“完璧な介護”を目指し過ぎないように』ということもよく言っています。新人は、高い理想を描いてついつい張り切りがち。そんな新人には、ある程度ブレーキをかけてあげるようにしています。
最後に、1つ目のこととある意味矛盾するのですが、
『オフの時間には仕事のことは忘れて、プライベートを楽しみなさい』とも言っています。オンとオフをきちんと切り替えることで、仕事にも新鮮な気持ちで向かえますから」
Hさんの“地道な努力”は実を結び、Hさんの施設ではここ最近、バーンアウトで退職するスタッフは1人も出ていないという。Hさんが言う“3か条”は、実行するのがそれほど難しいものではないだけに、心の隅に留めておいても良さそうだ。
*2025 年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~<厚生労働省>
公開日:2015/11/2
最終更新日:2019/5/27