毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「東京出身者はトク? 損?」という話題について紹介します。
東京都出身のヘルパーが、徳島県に移住して戸惑ったこと
総務省統計局が今年4月に発表した人口推計によると、全国47都道府県のうち、人口が増えたのは東京、沖縄、埼玉、愛知、千葉、神奈川、福岡の7県。
秋田県では1年間で1.3%も人口が減少するなど、一極集中が顕著となっている。
そんななか、東京から徳島に移り住み、現在訪問ヘルパーとして働くのが40代の女性・キヨコさん。
すでにヘルパー歴は10年近くに及ぶ彼女だが、東京出身で戸惑うことも少なくなかったという。
キヨコさんは東京都目黒区で生まれ、幼稚園から大学まで都内の学校に通った生粋の東京っ子。しかし大学時代に出会った彼氏が徳島県出身で、その彼が就職とともに地元に帰ったため、徳島県に嫁いだ。
夫は地元の市役所で公務員として働き、子どもを3人もうけたキヨコさんは、10年ほど前に家計を助けるためにヘルパーになり、今も同じ職場で稼働中。
そんなキヨコさんがいう。
「勤務初日、『よろしくお願いします。こちら(徳島)出身の夫と結婚しまして東京から参りました』と、挨拶すると、『すご~い』『東京だって~~』と、先輩の女性スタッフから大いに驚かれました。
完全に徳島の人間となった今ではその気持ちも理解できるのですが、地元の人には『東京=スゴい所』という感覚があり、『そこで育った人=スゴい人』と感じるようなんです。
最初の頃は、業務の説明を一度でパッと理解すると『やっぱり東京の人は違うね』と言われたり、パソコンの使い方に戸惑うと『東京の人なのにできないの?』と言われたりしました」
今となっては笑い話だが、当時は少し戸惑ったというキヨコさん。訪問先でも同じようなことは頻発したという。
標準語が冷たい印象になることも?
キヨコさんはこうも言います。
「夫は学生時代、全然なまりがなかったのですが、一緒に徳島に来てみると、地元の人が話す言葉は関西弁に極めて近いものでした。
夫が言うには、『徳島県人が地元の言葉で話すと、関西人から“変な関西弁だ”とバカにされるので、標準語で話していた』のだそうです。
だから私が徳島で普通に標準語を話すと、一発で“ヨソの人”というのがバレてしまい、
『あんたどこの人?』
『どっから来たん?』
と、毎回のように聞かれ、『東京です』と答えると、
『なんで徳島に(来た)?』
『東京からね(やや冷たい視線)』
といった返事が返ってきました。
お年寄りの方は、標準語が冷たいと感じたり、東京の人にネガティブな印象を持っていることも少なくなかったですね。
今は徳島弁が混ざるようになってきたので、そういうことも減ってきましたが、標準語がデメリットに働くこともあるようです」
ただしキヨコさんは、「無理をして方言を使うのも、それはそれでダメ。聞いていて気持ちが悪いみたいです」とも語っている。
東京出身に限らないが、言葉の問題に関しては“自然体”で臨むことが一番の対処法なのかもしれない。