毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「防災対策がバッチリな介護施設」という話題について紹介します。
災害に備えた介護付き有料老人ホーム
2011年の東日本大震災を筆頭に、地震、津波、洪水など、日本は自然災害に見舞われることが少なくない国。
働く場所を選ぶ際、誰もがまず考えるのは仕事内容や給料水準だろうが、身の安全のことを念頭に置く必要もあるはずだ。
そういった観点から見ると、介護施設には“安心感”というメリットがあるという。
埼玉県の介護付き有料老人ホームで働くマナミさんは、自らが働く施設についてこう語る。
「私が働いているのは、定員が200人という大型の施設ですが、防災対策の充実を最大の売りにしています。
大型施設なので敷地面積も広く、目の前に公園と総合病院があるため、施設を含めた一帯は災害時の避難場所に指定されています。なので、入居している方は非常時でも避難のことを考える必要はありません。それは我々も同じです」
建物の地下の備蓄倉庫には、アルファ米、レトルト食品、缶詰、粉末スープなど、10日分の食料や飲料水、医薬品、トイレットペーパー、カセットコンロ、携帯トイレ、懐中電灯、ろうそく、虫よけ、カイロ、(寝る時に下に敷く)マットなど、あらゆる防災備蓄品を用意。
入居者や職員のみならず、避難者を受け入れる態勢が整っているとのこと。
運営側が入居者やスタッフの安全確保に努めるのは当然だが、なぜここまで“本気”なのか? それには施設オーナーの強い意向があるそうだ。
きっかけは東日本大震災
「ウチのオーナーは、奥様の実家が宮城県の沿岸部だったこともあり、東日本大震災の時に熱心にボランティアに赴いたことで、防災対策の必要性を強く感じたようです。
スタッフにも被災地に行くように声をかけ、大勢のスタッフが津波に襲われた地域に足を運びました。
東日本大震災が発生する前も、施設では避難訓練を定期的に行っていましたが、いま思えばあれは“形だけ”でしたね。つまりそれまでは、防災に関する意識は特別なものではありませんでした。
オーナーが防災対策の充実を図ったのは、もちろん経営的な判断もあったと思います。
震災以降、防災対策に努めることには社会的な要請があり、それをストロングポイントにすることで、対外的に施設の良さをアピールすることができますから。
けれども働いている人間にとっても、『ここにいれば大丈夫』という安心感があることは大変ありがたいですし、いざという時は受け入れ側に回るため、近隣住民との関係も大変良好です」
働きながらにして、自然災害という日常生活上の不安材料を取り除けるのはとても魅力的。
自然災害というのは、襲われて初めて恐ろしさに気づくものだが、防災対策が整った介護施設で働くと、こんなメリットがあるようだ。