毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「日本語ができない介護スタッフ」という話題について紹介します。
(ケース1)代筆を頼まれるも“書けない”介護士
ご存知の方も多いと思うが、介護業界は慢性的に人手が足りていない事業所や施設が多い業界。そのため政府が旗振り役となって、外国から働き手を確保する策が進められている。
そうして日本に来た外国人スタッフは、日本語をきちんと学び、所定の試験にも合格した者ばかりだが、今回のテーマはそういった外国人スタッフの話ではない。
日本で生まれ、日本で育ったスタッフの珍事件だ。
介護業界で働くスタッフの仕事の範囲は、身体介護だけとは限らない。時には、普段やっていないようなことを利用者から頼まれることもある。
東京の下町の有料老人ホームで介護職として働くハルコさんは、ある日、利用者から手紙の代筆を頼まれた。
彼女が頼まれたのは宛先を書くことだったが、そこである“事件”が発生したのだ。
ハルコさんがいう。
「まず『埼玉』の『埼』という字が書けなかったんです。
その後、『県』という字が分からなくなり、さらに『富士見町は“富士山”の“富士”に…』と言われて、うっかり『藤』という字を書いていました。
そうしたら、利用者のおばあさんが完全に呆れてしまって、『あなた日本人じゃないの?』と言われてしまいました」
もともと漢字が苦手だったハルコさん。パソコンやスマホの普及で「自分の手で書く」という作業をする機会がめっきり減り、いざ宛先を漢字で書こうとすると、まったく漢字が出てこなかったのだ。
(ケース2)日本語が“読めない”介護士
一方、ある若い女性スタッフは、利用者のもとに届けられた手紙のせいで、とんだとばっちりを受けたそうだ。
ハルコさんがそのエピソードを語る。
「お友達から手紙をもらったおじいさんが、『目が悪いから代わりにこの手紙を読んで欲しい』と、若い女の子のスタッフに頼んだのです。
ところが、その手紙は和紙に筆で書かれたもので、あまりに達筆すぎて、その子は一文字も読めず、『これ日本語ですか?』と、言ったんです。
そうしたら、おじいさんが『あの子は字が読めないのか』と言って大騒ぎが始まったのです。
ちなみに私も半分ぐらいしか読めませんでしたが……」
ただ、救いだったのは、その若い女性スタッフがまったくへこたれていなかったこと。
そのスタッフは今でも、「古文書みたいだった」「まるで時代劇みたい」と、そのときのことを笑い話としてネタにしているそうだ。
介護職には、へこたれないハートの強さも必要なのかもしれない。