毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「緊張の初出勤」という話題について紹介します。
初出勤は緊張の連続。不安は尽きないもの
よほど肝の座った人でもなければ、初出勤日というのは緊張するのが当たり前。
それはホームヘルパーでもまったく同じだ。
「ちゃんと利用者のお宅にたどり着けるだろうか」
「利用者ときちんとコミュニケーションが取れるだろうか」
「利用者を不愉快にさせたり、ケガをさせてしまったりしないだろうか」……考え始めれば不安は尽きないが、ホームヘルパーとして働く先輩たちは、どうやって初日の緊張を乗り切ったのだろうか?
いきなり1人で訪問させることはないから安心して!
都内の訪問介護事業所で働くサトウさんがいう。
「初出勤で失敗しないか、心配をしているヘルパーの方は多いですね。でも、まったく心配をする必要はありません。
なぜなら、新人ヘルパーを初日からいきなり1人で利用者のお宅に訪問させることはないからです。
ウチの会社の場合、新人ヘルパーにはベテランヘルパーが同行することになっています。他の会社も、いきなり新人を1人で行かせることはないと思いますよ。
それに、たとえ新人ヘルパーでなくても、担当のヘルパーが変わったらサービス提供責任者が立ち会いますし、いきなり初対面の利用者さんと1対1になるということはまずありえません」
訪問介護事業所の求人情報をチェックしてみると、
「不安なく仕事ができるようになるまで先輩社員に同行し……」
「訪問介護未経験の方でも安心して仕事ができるよう、段階を踏んで仕事を担当してもらい……」
「初めての利用者には必ずスタッフが同行いたします」
といった記載があり、サトウさんの言うとおり、“いきなり1人で訪問”という心配はしないで良さそうだ。
ヘルパー・サヤカさんの、初出勤の苦い思い出
それでも初めての仕事で緊張してしまうことはどうしようもない。ホームヘルパー歴5年のサヤカさんが、初出勤の苦い思い出を語る。
「私の場合、専業主婦からヘルパーになったため、働くのはおよそ20年ぶりでした。しかも最後に働いたのは学生時代のアルバイトです。初出勤の前日はまったく眠れず、遅刻するのが怖くてあまりにも早く家を出てしまい、結局駅前のコンビニで立ち読みをして時間を潰しました。
先輩……といっても年下でしたが、その先輩と合流すると、『バッチリ化粧しすぎですよ。みんな初日はそうですけどね』と笑われました」
初めての訪問では、利用者のお宅では先輩の仕事を見ているだけだったサヤカさん。
テキパキと仕事をこなす先輩を見ているうちに、『こんなこと私にできるのかしら』と、どんどん不安になってきたそうだ。
仕事ができるか不安なサヤカさんへ、夫から2つのアドバイス
「家に帰ってから、自分に介護の仕事ができるか不安になり、『やっぱり辞めたい』と弱音を吐いたんです。
すると、普段は温厚な夫が、『いま辞めたら、サヤカのために色々と準備をしてくれた人の苦労をムダにするんだぞ』『何もしないうちに逃げたら、子どもたちは必ずそのことを覚えている。そうしたらもうサヤカは2度と子どもたちに“○○しなさい”と言えないぞ』と、こんこんと諭されました。
そして夫は、
『相手も初対面で緊張していることをわかってあげなくちゃ』『不安なら、やるべきことを全部リストアップしておけ』と、アドバイスもしてくれました。
『やっぱり社会の第一線で働いている人は違うわ』と、夫のことを見直したのを覚えています」
そんなサヤカさんも今ではすっかり図々しく(?)なり、すっぴんやジャージは当たり前、まるで家族か親戚のように利用者とコミュニケーションを取れるようになっている。
今では新人や後輩を指導する立場になった彼女だが、緊張している新人には自分の経験を話した上で、夫のアドバイスをそのまま授けているそうだ。
1人での訪問や初めての介護に不安な人、利用者さんとのコミュニケーションに悩んでいる人も、参考にしてみてはどうだろうか。