毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「コミュニケーションのきっかけはお化け屋敷」という話題について紹介します。
なかなか話の輪に入れない「人見知り」や「引っ込み思案」
改めたくてもなかなか改められないのが、人見知りや引っ込み思案の性格。
本当は話の輪に加わりたいのに、どうしても勇気が出ず、ひとりぼっちの時間を過ごしている人はいるだろう。
そんな人見知りの人が周囲と打ち解けるきっかけは様々だが、都内のある介護付き有料老人ホームで働くアベさんは、
利用者向けに準備したあるレクリエーションをきっかけとして周りと打ち解けることに成功したという。
アベさんの先輩のヒラノさんが語る。
「ウチの施設では毎月いろいろなレクリエーションをやっていますが、特に人気が高いのが、夏にやる
“お化け屋敷”というイベントです。
施設の一室をお化け屋敷のように飾り付けて、入居しているお年寄りたちにヒンヤリとした気分を味わってもらうのですが、みなさん子供のようにキャーキャー言って、大変喜ばれています。
昨年は、リアルに作られた墓石を見てお経を唱える人、口裂け女に変装したスタッフのメイクを見て大笑いする人など、珍事件がいくつもありました」
学園祭ではお化け屋敷が定番企画だが、人はいくつになってもお化け屋敷が大好きなのだ。
普段は無口なスタッフがお化け屋敷で豹変?!
しかし、ヒラノさんの施設の今年のお化け屋敷イベントでは、“驚かせる側”に異変があったという。
「イベントの1か月ほど前、今年のお化け屋敷についてスタッフで話し合い、『去年は和風だったので、今年は洋風のお化け屋敷で行こう』ということになりました。
すると、今年4月に入社した超無口なアベさんが珍しく積極的にアイディアを出し、
“入り口でブーケを受け取り、一番奥の椅子に座っている大きな人形にブーケを渡す”
という仕掛けになりました。人形役はアベさんです」
そして当日、大きなスーツケースを引きずってやってきたアベさん。本格的な衣装と出来上がったメイクは、老人ホームのレクリエーションのお化け屋敷のレベルを遥かに超えたものだったそうだ。
顔に施した血や傷跡のメイクはまるで本物で、「これでは怖すぎるのではないか?」と、心配するスタッフもいたそうだが、結果は大成功だったという。
趣味のコスプレがきっかけでコミュニケーションも良好に!
「お化け屋敷は大変好評で、人形に扮したアベさんは、質問攻めにあって大騒ぎでした。その晩の打ち上げで聞いたところ、彼女はコスプレが大好きで、お化け屋敷で着たゴスロリ調の服はすべて自前。特殊メイクも独学で覚えたそうです。
それまで彼女は、仕事ぶりはマジメでしたが、コミュニケーションが課題でした。
しかし、お化け屋敷イベントがきっかけで同僚や入居者さん達と上手にコミュニケーションが取れるようになり、目に見えて生き生きするようになりました」
“芸は身を助ける”という言葉もあるが、アベさんは自分の趣味が認められたことで、周囲と打ち解けることができたようだ。
介護施設のレクリエーションでは、ピアノやギター、書道、手品、イラストなど、趣味や特技を披露する機会はたくさんある。
コミュニケーションに自信がない人は、
自分の得意分野や好きなことを突破口にすれば、自ずと道は拓けてきそうだ。