毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「引きこもり経験者は介護現場に大歓迎?」という話題を紹介します。
引きこもり=無職期間あり、で働けるのか不安
現代日本社会における大きな社会問題が、「引きこもり」と呼ばれる若者の存在。少子化が超ハイペースで進む一方で、引きこもりの人数は50万人とも100万人とも言われている。
引きこもりの若者の力をいかに活用するかが今後の大きな鍵だが、彼らの社会進出を阻むのが『履歴書の空白』だ。
ふとしたきっかけで脱・引きこもり!
無職の期間があることを、企業は嫌う傾向があるが、都内のある有料老人ホームでは、引きこもり経験者を採用してみたところ、思わぬ発見があったという。
事業所で働くハセガワさんがいう。
「きっかけは、引きこもり経験者のSさんという男性を採用したことです。Sさんは、10代から20代にかけて数年間、一切仕事をせず、ほとんど家から出ない生活をしていましたが、ある人の紹介でウチの施設を見学。居心地が良かったようで、『働きたい』と申し出があったため、介護職として採用しました」
ハセガワさんが働く老人ホームを経営する社長は、介護以外にも手広く仕事を展開していて、顔が広い人物。
ある時、仕事関係の友人から「親戚に引きこもりの子がいる」と、相談を持ちかけられたため、「ウチの会社で良ければ遊びにおいで」と言い、結果的にはそのまま働くことになったのだ。
引きこもり経験者のSさんが介護に合っていたのはなぜ?
「働き始めるとすぐに、Sさんがとても繊細な人だということが分かりました。引きこもりを経験しているだけに、自分が周りからどう見られているのかをすごく気にするのです。
それは言い換えれば、他人がどう思っているのかを推し量れるということ。
ですから、『
利用者の方が今なにをして欲しいのかを考えられるアナタは、立派なスキルの持ち主なのよ』と伝えると、とても喜んでくれ、ポジティブに仕事に向かい合えるようになりました」
引きこもり経験者の共通点とは
Sさんが立派な戦力になったことから、無職期間がある人を採用することにとまどいがなくなったというハセガワさんの事業所。
引きこもり経験者には共通点があるという。
「基本的に
とてもマジメです。仕事ができる嬉しさなのか、はたまた承認欲求が生まれるのかは分かりませんが、“そんなに頑張らなくてもいいから”というぐらい頑張ってしまう傾向があるので、そこを上手くコントロールするのは我々ベテランの役割です。
引きこもり経験者というと、ついつい色眼鏡で見てしまいがちですが、多分ちょっとしたボタンの掛け違いでそうなってしまっただけなんですよ」
Sさんによれば、「家から出て、面接を受けるのが、ものすごくハードルが高い」そうだが、その一歩さえ踏み出せば、受け止める場所はいくらでもあるということ。
現在“引きこもり状態”の人が漏れなく介護に携われば、介護の人手不足問題もあっさり解決してしまうだけに、それをサポートするのは社会の役割とも言えそうだ。