ほとんど介護の知識がないまま、異業種から介護業界に転職したSさん。たまたま小規模デイサービスに勤務することになりましたが、この職場の形態が、自分にピッタリだといいます。小さな組織の中で、利用者さんには元気に自分たちらしく過ごしてもらいたい、そんな思いが伝わってきます。今回は、Sさんの介護の理念について、お話を伺います。
*W・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
W・Sさん(31歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…5年
●転職回数…4回(介護業界は1回)
●介護の仕事に就く前の経験…美容師、古着店店員、飲食店店員、図書館受付
●現在の勤務先…小規模デイサービス
●保有資格…介護福祉士
家で過ごすための身体機能回復を支援する
介護の仕事を探していた当初は、介護施設のそれぞれの特徴など、まったく知りませんでした。たまたま出会ったのが、定員10名の小規模デイサービス。大手ではなく、2事業所しかない小さな組織です。これがまた、自分に合っていたんですね。
大手なら、福利厚生がよかったり、給料が少し高かったりと、メリットがあるのでしょう。でも、マニュアル通りに業務を進めるようなところは、自分には向いていませんし、異動が頻繁にあるのも落ち着きません。2事業所しかないからこそ、事業所の個性を打ち出せます。
僕は当初、今いるこの事業所に配属されて、デイサービスの現場職員として仕事をしました。送迎とデイでの対応が主な業務でした。その後、営業担当となり、地域の方々に施設を知ってもらい、利用に結び付ける仕事もしました。いまは管理者となり、事業所のとりまとめをしています。
管理者であれば、施設における利用者さんの事故などが気になるところですが、僕は、利用者さんにはご自分らしく行動していただきたいと思っています。利用者さんが安静にしていて何事も起こらないことを、周囲のスタッフが望んではいけないと思うんです。多少の転倒リスクがあったとしても、ご自分のやりたいことを実現し、よりよく生きていただきたいと思っています。
そもそもデイサービスは、在宅を主体として生活するための介護保険サービスです。家でできるだけ不自由なく暮らせるよう、身体機能回復にも力を注ぎます。食事介助も、トイレ誘導も入浴介助もしますが、過剰にならないように気を付けています。
ご家族からも過剰介護は敬遠されます。「食事を自分でしないんです。そちらでは食べさせていましたか? 自分で食べてほしいんですけれど」「足が上がらなくなっています。ちゃんとそちらでリハビリなどしているのでしょうか?」などと、利用者さんのご家族に言われることがありました。利用者さん自身の力を存分に発揮して生活していただきたいのは、家族の願いです。僕らはその思いも受け止め、できることを大事にし、個性豊かに暮らしていただけるよう、心がけています。
半年休んでも、覚えていていただける存在に
そのためには、僕らスタッフが、本気で利用者さんのことを思い、お付き合いをさせていただくことが大切です。素直な自分を出してお付き合いをしないと、信頼してもらえません。利用者さんたちは、僕らの心の持ち方にも敏感です。一生懸命に心を注いで接して行かねばならないと思っています。
かつて、過労で半年休み、復帰したときのことです。認知症の利用者さんたちは、自分のことをもう忘れてしまっただろう、と思っていました。けれど、そうではありませんでした。一番認知症が重いと思っていた方に、「あんたのことは覚えているよ。どうしたの? ずっと来なかったじゃない。寂しかったよ」と言われました。うれしかったですね。
こんなふうに心にとめていただける存在になるために、努力していきたいと思っています。
最終回の次回は、Sさんの今後の展望について伺います。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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