地元北海道の特別養護老人ホーム(特養)と療養型病院で、措置制度時代を彷彿とさせる過酷な介護を5年間続け、体を壊したOさん。以後はデイサービスなどで、昼間の仕事を中心に働いてきました。その後、パ―ト勤務から正社員に大抜擢。しかし、起業を考えて辞職するも、挫折して給料もダウン。そして以前の職場で本社職員へ……。二転三転の「介護職人生」をどのような心境で歩んできたのか。転職を考える人なら必読のOさんの履歴を、4回に分けてお届けします。
*O・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Rさん(34歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…14年
●介護の仕事に就く前…介護専門学校学生
●介護業界での転職回数…6回
●いままでの勤務先…特別養護老人ホーム、療養型病院、デイサービス、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、大手介護関連企業
●保有資格…介護福祉士、介護支援専門員
デイのレクリエーションが苦手で特養を選ぶ
車が好きで、高校時代は、エンジニアなどの職業に憧れていました。けれど、確実に収入を得ようと思ったら、資格を得てできる仕事がいいと、親に説得されました。専門学校の授業料を出してもらうのだから、親の意向も大切です。折しも、介護保険が始まる寸前で、介護の仕事に注目が集まっている頃でした。たいして考えもせず、親のすすめにしたがって、地元札幌の介護福祉士の資格がとれる2年制の介護専門学校に入学し、卒業後は特養に入職しました。
特養がいい、と思ったのは、自分が人見知りだからです。デイサービスは、テンションを高くしてレクリエーションを提案したり歌を歌ったりしなければならないイメージがあり、そんなのは絶対無理だと思っていました。それより、純粋な介護技術を学べる法人経営の特養のほうがいい。作業そのものに向き合うほうが、レクリエーションで利用者さんとコミュニケーションをとるより、自分には向いていると考えたんです。当時は今よりも介護職の人気があった時代。札幌市内の特養を面接しましたが2つも落ちて、北海道の最北端の町の特養にようやくひっかかり、就職しました。
当時はまだユニットケアが始まる前、4人部屋の特養でした。利用者さんの人数が多く、職員が少なくて、食事介助8人分を1人でこなすほどでした。食事介助、オムツ替え、入浴だけでも忙しく、夜勤も多く、いつも体の調子が悪かった。車が好きで、当時はスポーツカーに乗っていたのですが、夜勤明けで疲れ切って運転していて、自損で車2台を大破しました。ずっと血便が出ていても医者に行けず、職場で具合が悪くなり、緊急入院したこともあります。十二指腸潰瘍でした。
しかも、勤めていたのは北海道の田舎の町だから、札幌から来たというだけでなんとなく敬遠され、居心地の悪さを感じていました。体もつらく、3年でギブアップ。とにかく札幌に帰りたくて、転職活動を始めました。
ハローワークの情報を携帯で見ながら面接の予約をするのですが、北海道の最北端の町から札幌に行くにも片道6時間。往復するには1日がかりです。面接に落ちると、精神的にも金銭的にもつらいんですね。2回目の面接で療養型病院の介護職に受かったときには、もうどこでもいい、田舎を離れて札幌に戻れるなら内容は問わない、と思って、特養を辞めました。
急性期の認知症の患者さんを療養型病院で介護
しかし、次の療養型病院もきつかったですね。認知症の専門病棟で、急性期の方がほとんど、というフロア。大声を張り上げて暴れたり、食事のときに前の人に牛乳パックを投げつけたり、ひと時も目が離せない。スタッフは食事をゆっくりする暇などなく、弁当を食べながら廊下を歩き、各部屋を見て回り、危険回避のためにベッドに走り寄るような日々です。
朝食を患者さん全員が8時ぐらいに食べ終わるには、朝3時には患者さんを起こさないといけない。車椅子を壁に向けて並べ――つまり動けないようにするわけです――、タオルで雑に顔をどんどん拭いていく。ベッドには4点柵(ベッドのまわりを囲う柵)をつけていました。今なら間違いなく虐待だと通報されます。
表向きには、「ベッドにラバーシートは使いません。ていねいに毎日ベッドメイクをします」とうたっていましたが、それを実現するために、尿漏れでマットまで塗れたベッドを毎日整えるのが本当に大変でした。雑な介護をしているのに、変なところにこだわる。そのバランスの悪さに疲れて、毎月のように熱を出しました。
2年を過ぎるととことん体が疲れ切り、「もう、夜勤のある特養や病院はやめよう」と決心しました。レクやコミュニケーションなどが苦手で敬遠していたデイサービスですが、そこなら昼間だけの勤務ができる。健康には代えられないと思い、デイサービスやデイケアの求人を携帯で探し、転職しました。
次回は起業を考えるOさんの様子をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*O・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、
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