いろんな場所で、さまざまな介護の仕事を経験してきたO・Uさん。それぞれの仕事に悩みましたが、今は訪問介護と成年後見の仕事をしているといいます。
一見、まったく違う仕事のようですが、このふたつが、実は自分の性分に合っていると実感しているのだそうです。
仕事は、キャリアや給料の多寡で選びがちですが、Oさんは「自分自身が一番居心地のいい環境」を突き詰めた結果、こんな転職になりました。
みなさんも、持続できる働き方とは何かを考えるとき、自分自身の「性分」を見極め、それに見合ったところを選ぶことが大切なのかもしれません。
*O・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Uさん(42歳)のプロフィール・転職体験
●介護業界歴…17年
●介護の仕事に就く前…福祉系大学院
●介護業界での転職回数…5回
●いままでの勤務先…社会福祉協議会(デイサービス、介護老人保健施設)、デイサービス、病院、特別養護老人ホーム、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所
●保有資格…社会福祉主事、社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー
訪問介護なら、組織の利益より利用者の権利を守れる
介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士と、介護の仕事で必要な資格はみな取得し、介護士として、医療相談員(MSW)として、ケアマネジャーとして勤務してきました。
資格を持っていたからこそ、こうした仕事に就くことができたのです。
でも、これまで組織のしがらみに納得がいかないと感じ、辞める羽目になることが多かった。
なんで、私はこんなふうに辞めてしまうのだろう。
がまんしたほうがいいのだろうか――。
でも、きっとがまんして勤務していたら、燃え尽きてしまうだろうと思います。
もちろん、100%完璧な職場なんてないのはわかっていますが、組織の都合で利用者さんに不利益が生じるのは、見ていられないのです。
それは私なりの正義感や使命感であり、譲れないものでもありました。
職を失ってみると、その頑固さがアダになっているとしみじみわかります。
だからといって、自分を変えることはできません。ならば、条件のよさやキャリアアップよりも、その性分にフォーカスして職業を選択したほうがいいのだ、と思い至りました。
とにかく利用者さんのことを第一優先で考えたい――。組織の思惑や都合で、利用者さんの権利や自由を奪いたくない。それが、私が介護の仕事をする上での理念のようなものです。
ならば、組織のことをあまり気にせず仕事ができる環境を選ぼう。
そう考えると、訪問介護の仕事は、自分に合っているのではないかと思いました。
今まで、訪問介護のヘルパーになろうと考えたことがありませんでした。けれど、実はこの仕事が合っているのかもしれない――。
さっそく、求人サイトで訪問介護の仕事を探し、今、ヘルパーとして働いています。
「ケアマネジャーや社会福祉士の資格を持っているのに、もったいない」と言われますが、そんなことはありません。
利用者さんのお宅に伺い、利用者さんとふたりになれるこの仕事は、組織のしがらみなどを感じにくく、利用者さんへの思いを純粋に保つことができます。
自分にはピッタリだと感じています。
だから、週に2回の仕事の時間の中では、利用者さんの権利や自由をできるだけ大事にするよう、努めています。
成年後見人としても利用者に向き合う
また、社会福祉士の資格を生かして、成年後見人としても活動しています。
認知症や知的障害などで、判断能力に不安がある利用者さんの財産をお預かりし、財産を守り、さまざまな書類上の手続きなどをします。
ご自宅や老人ホームなど、暮らしている場はさまざまですが、その暮らしの場を訪ねながら、本人の権利を護ることを何よりも大事にして活動できる。
関係する法律をよく解釈し、法にのっとった権利擁護を考え、実行していくという高度な仕事内容も、自分の成長につながります。
訪問介護のヘルパーと成年後見人、まったく違う仕事のように見えますが、実は「利用者さんと1対1の関係を保てる」という点で共通しています。
利用者さんの要望をストレートに受け止め、何ができるか考える。仕事をしている最中は、組織のことを考えなくてすむのです。
私にはこういう仕事が向いているのだと、長年介護の仕事をしてきて、ようやく思い至りました。
この仕事の形態を大事にし、できるだけ長く続けていきたい。だから、無理せず、自分のペースで続けていこうと思っています。
肩書やキャリアなどから仕事を考えずに、自分らしさを大事にしたほうが、仕事は楽しい。
今、心からそう思えているのです。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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