■書名:あの介護施設には、なぜ人が集まるのか
■編者:糠谷 和弘
■発行元:PHP研究所
■発行年月:2013年6月24日
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「大競争時代」の中、地域で一番の人気を誇る施設の秘密とは?
日本で介護保険がスタートしたのは平成12年のこと。当初は建設業など何かしら施設と関係性が深い業界が介護市場に参入するケースが多かったが、ここ数年は介護とは全く関係ない業界からの新規参入が増えているという。
多種多様な業界が参入した結果、デイサービスの施設からほど遠くない場所にまた違うデイサービス施設が建設されるというケースも珍しくない。このような現在の介護業界の状況を、本書の編集者である糠谷さんは「大競争時代」と表現している。
本書では、各施設が生き残りに必死になっている中、独自のサービスを展開し、業績を伸ばしている地域で一番人気の18施設を紹介している。
その一例をピックアップしてみよう。大阪府・堺市のあるデイサービスでは、食事や入浴、レクリエーションを楽しむデイサービスとは異なり、本当の仕事ができる「お仕事デイサービス」を展開している。
また、埼玉県川越市にあるバス会社が運営するデイサービスでは、なかなか遠出が難しくなってきた利用者に対し、施設内で旅を疑似体験できる「バーチャルツアー」を行っている。
香川県高松市には、食事の時間はもちろん、コーヒーを飲むときの砂糖の量など、細部にわたって全面的に個別対応を行う、「日本一わがままを聞く有料老人ホーム」もある。かと思えば、岡山県倉敷市には「日本一不親切なデイサービス」も。親切にすることがかえって利用者に不利益をもたらすケースもあるとして、リハビリの専門家たちが身体能力の回復につとめたサービスを行っている。
これら進化するサービスは、「従業員満足から生まれる」という。従業員たちの満足度を高めることも重要であると考えており、兵庫県姫路市の法人は独自のケアマイスター制度を定め、認定されれば給与の手当てがアップする仕組みを整えた。業界の給与水準を大きく超え、新卒についてはほかの業界と同一水準まで上昇させることができたという。
また、愛知県一宮市の介護センターでは、「パートを主役」とし、かなりの権限をパートに任せるなど、やりがいを感じられる環境を整備している。
<18社に共通することは、人が集まってくる企業だということです。ここで言う”人”とはお客様であり、人材です>
<(施設には)「どうしたらもっと介護をおもしろがることができるか」と工夫している人たちがいます。(中略)”仕事”としてどのように創意工夫して、それをどう成し遂げているのか知ってほしい>
編集を手がけた糠谷さんは「『施設の感動ストーリー』で片付けてほしくない」と語っている。経営者は従業員のために何ができるか、従業員は利用者のためにどうしたらいいのか、思い、悩み、行動する等身大の姿を読み取ってほしいと語っている。
<松原圭子>
著者プロフィール
糠谷 和弘(ぬかや かずひろ)さん
経営コンサルタント。スターコンサルティンググループ代表取締役。介護保険施行当初から介護経営コンサルタントとして活躍し、その実績は340社を超える。現場指導のかたわら、全国各地で年間40本以上の講演も行っている。