■書名:ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!
■著者:長尾和宏、丸尾多重子
■発行:ブックマン社
■発行年月:2014年2月16日
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間違った介護施設選びとは!? 介護保険制度の問題点も提起
2013年に厚生労働省が行った調査によると、認知症高齢者は推定462万人、予備軍を含めて800万人であるという。
さらに2025年には、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となる。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という高齢社会に突入。医療も介護も供給が追いつかなくなるという事態が、あと10年足らずで訪れる。
本書は、医師の長尾和宏さんと、関西で介護者たちの駆け込み寺「つどい場さくらちゃん」を主宰する丸尾多重子さんによる共著。
長尾さんは年中無休の外来診療と在宅医療に携わっているほか、介護や認知症に関する講演活動も行っている。一方の丸尾さんは、これまでに自宅で家族を介護し、看取った経験を持つ。ヘルパー1級の取得講座の実習で介護現場に憤りを感じたことが、「つどい場さくらちゃん」を設立するきっかけになったという。それらの経験を活かし、家族の介護に悩む人たちのサポートを行っている。
本書では、リアルな介護現場を熟知する2人が、介護保険制度や介護施設などについて、軽快なトークを繰り広げる。例えば、下記のようなものだ。
●間違った介護施設選びとは?
●最後まで施設で看取りたいけれど、世間がそれを許さない!?
●ケアマネさんを疑ってこそ信頼が築ける
●認知症になった親を看取れない子どもたち
介護業界は常に人手不足だ。また、介護事業所の運営はビジネスなので、効率性も重視される。本書では、効率を優先してしまい、利用者に寄り添った介護とは、とても言えない対応を行っている施設の例を紹介。このような施設に入所した利用者の中には、「入所したときは歩けたのに、入所して数週間で車いす生活になった」「まだ食べられるのに、胃ろうを提案される」「大人しくさせるために、必要のない薬を投与される。結果、寝たきりになる」といったケースもあるという。
また、介護の要であるケアマネジャーも、今は多くが介護事業所に属しているため、営業マン化しているという点を指摘。家族の療養方針をケアマネが変える権限がないにもかかわらず、家族の意に沿わない特養への入所をすすめるというケースも紹介されている。
<核家族化、共働き社会、高齢化に伴って、家族だけで介護するのに限界がやってきた。介護保険制度は、ある意味、国民の誰もが待ちに待った制度でもあったよ。制度自体が100%悪いなんてことはない。その活用の仕方が問題なんよね(丸尾さん)>
先に紹介した対応を行う施設は一部だろう。しかし、生産性や効率性を追求しすぎると、本来は主役になるはずの利用者が犠牲になってしまう可能性があることには、考えさせられる。
著者プロフィール
長尾和宏(ながお・かずひろ)さん
複数医師による年中無休の外来診療と在宅医療に従事。長尾クリニック院長。医学博士、日本尊厳死協会副理事長、日本慢性期医療協会理事、日本ホスピス在宅ケア研究会理事、東京医科大学客員教授。『胃ろう、抗がん剤、延命治療いつやめますか?「平穏死」10の条件』『あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか? 抗がん剤 10の「やめどき」』(ブックマン社刊)など著書多数。
丸尾多重子(まるお・たえこ)さん
大阪市生まれ。15年間東京で食関係の仕事に就く。帰阪後10年間で母、兄、父を在宅介護。ヘルパー1級取得の実習で介護現場の実態を知った憤りから、2004年3月兵庫県西宮市に“つどい場さくらちゃん”を設立。2007年4月NPO化。