■書名:認知症の「真実」
■著者:東田勉
■発行元:講談社
■ 発行年月:2014年11月20日
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間違った診断・治療を受けないために、認知症の真実がわかるレポート
2004年に厚生労働省が「痴呆症」という呼び方から「認知症」という呼び方に呼び変えると発表した。その当時(2002年)は149万人だった認知症が、2012年には305万人、2013年にはさらに462万人と急増している。この短期間に認知症が急増した原因は何だろうか。
この疑問に著者の東田さんは「認知症を知らない医者が多いこと」を挙げている。すでに言葉が誕生して10年以上であることから、確立された診断方法があると思われているが、実は認知症には統一された診断基準がない。そのため、医者によってバラバラな診断・治療がされているのが実情だそうだ。
その結果、本来認知症でない人までも《認知症》にされてしまう現象も起こっている。さらに間違った薬物療法を受けたことよって、本当の《認知症》になってしまった、というケースも多い。厚生労働省は、「認知症は早期受診、早期診断、早期治療が大切である」と推奨しているが、著者はこの対応にも警鐘を鳴らしている。
<本書の最大の狙いは、認知症を知らない医者がいかに多いかを知ってもらうところにあります。認知症は、標準治療とされるものがそもそも間違っているため、(中略)お年寄りがボロボロにされる可能性が少なくないのです。玉石混交はどの世界にもあるのでしょうが、こと認知症に関して言えば、医療の世界は石ころだらけと言わざるを得ません>
本書では、認知症の可能性がある家族や要介護者が適切な治療・ケアを受けるために、介護者が知っておくべき情報が掲載されている。ハウツー本とは異なるが、タイプ別に全く異なる認知症の症例、薬の副作用のこと、介護者の心のケアまで紹介している。
「《廃人》になる薬を説明なしで処方する医者」「認知症治療薬の知られざる副作用」など、衝撃的なエピソードもあるが、目を通しておいて損はないはずだ。
また、「レビー小体型認知症」についても詳しく取り上げているのも特徴的だ。レビー小体型認知症は、専門医でも知らない人が多い認知症の一つで、パーキンソン病やうつ病と混同されるケースも多い。間違った投薬を受けると「動けなくなる」「寝たきりになる」など症状は悪化してしまう。
本書ではレビー小体型認知症の介護者だけではなく、当事者本人のインタビューも読むことができる。間違った診断を受けた患者側の苦しみ、認知症として生きる困難さなどにも耳を傾けてほしい。
<松原圭子>
著者プロフィール
東田 勉(ひがしだ・つとむ)さん
國學院大学卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務後、フリーライターとなる。2005年7月~2007年9月まで、介護雑誌「ほっとくる」(主婦の友社)の編集を担当。「介護のしくみ」「新しい認知症ケア 介護編」など、介護や認知症に関する編著作も多く発表している。