■書名:介護現場で使えるコミュニケーション便利帖
■著者:尾渡順子
■発行元:翔泳社
■発行年月:2014年12月4日
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利用者に本当に伝わる言葉とは? コミュニケーションを円滑にする「言葉がけ」技法
介護の現場でスタッフが接する相手は、認知症であったり、身体機能の衰えでうまく聞き取れないなど、コミュニケーションがとりづらくなっている人が多いのではないだろうか。また、中には、性格的に打ち解けにくい人や、もともと口数が少ない人、相性がどうも合わないという利用者もいるだろう。
しかし、「コミュニケーションしづらい」ままでいると、利用者の意志を無視してしまう危険性がある。
本書の著者である尾渡さんは、長年介護の現場で活動を行ってきた。特にコミュニケーションの達人だった、というわけではなく、利用者が打ち解けてくれないときなどは「介護職に向いていないのでは?」と思うこともあったという。本書では、尾渡さん自身が経験してきた事例をもとに、現場で実際に使える「伝わる言葉がけ」を紹介している。
本書内では、「食事」「レクリエーション」「就寝」「外出先」など、さまざまな状況で想定できる言葉がけを紹介。レクリエーションに参加しない利用者には、「せっかくだから参加してください」と言うより、「チームの応援をしませんか?」と、さりげなく参加を促すほうが利用者の気持ちの抵抗も少ない。
自分でできるのに、着替えを手伝ってほしいと甘えが見られる利用者には、「できることは自分でやりましょう」と言うよりも、「右の袖は一緒にやりますから、左の袖は自分でやってみましょうか」と、様子を見ながら自立支援の言葉がけをするほうがいいという。
<加齢にともない、コミュニケーションがとりづらくなった人たちの「願い」や「希望」を聞き、隠された「悲しみ」や「苦しみ」を自分のことのように感じ、受け入れること。利用者の生活を多方面から支え、本来持っている力を引き出すこと。これらは私たち介護職員に求められる重要な役割です>
全部で6章の構成となっているが、そのうち2章は認知症のコミュニケーションやケアについて解説している。深夜徘徊や記憶障害などの症状がある認知症の利用者に対して、効果的な言葉がけを紹介。状況別にOKな言葉、避けるべき言葉の例も紹介しているので、日々のケアにも取り入れやすくなっている。
言いたいことは同じでも、言葉の選び方や言い回しを変えるだけで、相手への伝わり方が違ってくる。利用者への言葉がけだけではなく、日常生活でのコミュニケーションでも活用できる内容ではないだろうか。
<松原圭子>
著者プロフィール
尾渡 順子(おわたり・じゅんこ)さん
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士など多数の資格を持つ。介護福祉士として福祉の現場で専門的にレクリエーション援助に携わり、実践報告、研究成果を多数発表。現在、社会福祉法人興寿会教育実践研修センター所長代理を務める。