■書名:添削式 介護記録の書き方~在宅・通所・入所~
■編著者:伊藤亜記 / 監修:NPO法人・東京都介護福祉士会
■発行元:ひかりのくに
■発行年月:2007年7月(2008年9月改訂版)
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添削から学ぶ、在宅・通所・入所の介護記録の書き方
介護記録は、利用者やその家族と、さらにスタッフ同士のコミュニケーションツールとして大事な役割を担うもの。大事だという認識を持ちながらも、実は、「毎日、介護記録をつけるのが面倒だ」と感じていたり、機械的な記入になりがちだったり、そもそもどのように書けばいいのか悩んでいる人も多いのではないだろうか。
著者の伊藤亜記さんは、介護記録を書く際には「どんなケアが求められているのか」を必ず念頭に置くべきで、それが一番大事だと言っている。
<その視点で、ご利用者の介護に当たる中で見えてきた変化などを、ケアマネジャーに報告したり、医師・看護師に相談したり、ケアカンファレンスにかけることで、ご利用者のためによりよいサービスを提供できることになります。そのための記録です。つまり、ご利用者の変化に合わせて、ケアプランを見直していくための、「土台」になっていくものが「介護記録」なのです。作文や日記感覚では「介護記録」になりません。>
本書は添削式というユニークなスタイルで、介護記録の書き方のヒントを示してくれる。
本書をめくると、大量の赤い文字が目に飛び込んでくる。それもそのはず。全体の3分の2が介護記録の実例集で、どのページにもさまざまな添削の赤入れが入っているというわけだ。訪問、通所、入所、それぞれのケースの実例が掲載されているので、どの介護サービスに携わっている人でも応用できる。
介護記録の実例集で取り上げる利用者のケアプランも掲載されている。まずはそのケアプランに目を通し、ケアプランが目標としているところを理解したうえで、介護記録の添削ページへと進むのがポイント。それが、著者が言う記録を書く上での大事な視点となる。
添削ページを見ると、著者が重視しているポイントが見えてくる。
たとえば、『誰が読んでもイメージがわくように、具体的に分かりやすく』『自分が見たことや聴いたことをそのまま記載する』など。一見、誰でも実践していること、簡単にできそうなことに思えるが、本書の介護記録の添削を確認していると、ケアプランに添った視点での具体性というのがどういうものか、多くの気づきがある。
赤字が入っている点をいくつかピックアップすると…
「少し疲れたと言っていた」という記載には、「何に疲れたのか」記入すべきだというアドバイス。あるいは、「日中特変なかった」という記載に対しては、「変化がない生活はありません」という厳しい指摘。「熱に対する訴えの言葉もなかった」というように具体的な様子を記入するようにと解説する。
もちろん赤入れされた介護記録は「完璧なお手本」ではない。「もっとこうすれば」という自分なりの視点で見ていくことが大事になる。
<「介護記録」は、単に介護の様子を記入するだけではなく、自己の介護に対する意識も高めることができるツールです。介護記録が、まさに自身の“介護に対する心”そのものとなって内容に表れるのです。>
介護記録の書き方を学ぶだけでなく、利用者の変化をどうとらえるかについても学べる一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
伊藤亜記(いとう・あき)さん
介護コンサルタント、介護福祉士、株式会社ねこの手代表取締役。出版社へ入社後、祖父母の介護と看取りの経験を機に福祉の勉強を始める。介護福祉士を取得し、介護老人保健施設の介護職、ケアハウスの介護相談員を務める。大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。旅行介助サービスや介護相談、介護冊子の制作などで活躍中。