■書名:介護保険施設のための できる!感染対策
■著者:四宮 聡
■出版社:リーダムハウス
■発行年月:2017年10月
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介護職が現場で使える!介護施設ですぐに役立つ!感染対策の入門書
ノロウイルス感染症やインフルエンザなど、感染症は高齢者にとって重大な病気だ。免疫力が低下した高齢者においては、ときには命までおびやかすこともある。
集団で生活する介護施設では、人から人へとうつる感染症は特に注意が必要となる。
感染に対して取るべき対策は、病院、介護施設、自宅など、場所に応じて異なる点も多い。
そこで本書では、介護施設に対象をしぼって、感染への対策に必要な知識を解説。
介護施設での対策に限定しているので、介護現場での実務に活用しやすい内容となっている。
感染対策の解説の前に、「感染」そのものについて詳しく説明されているのもありがたい。適切な対策のためには、感染についての理解が基本になるからだ。
ウイルスと細菌の違いや耐性菌など、感染の仕組みや感染源についてわかりやすく書かれたコラムもあり、専門的な知識を知りたい人にもおすすめだ。
本書で説明される感染防止の基本については、筆者は次のようにまとめている。
・感染防止には、「感染させない」「感染しない」の2つがある。
・感染防止とは、「感染経路の遮断」である。
・感染経路の遮断とは、「感染源を運ばない」「感染源をシャットアウトする」ことである。
さらに、感染対策には次の2種類があるという。
1.感染予防のために日常的に行うべき対策
2.感染症発生時に拡大防止のために行うべき対策
本書では、まず感染の予防や対策についてこのように大きく整理し、それぞれについて実践的な対応策のポイントを解説している。
「日頃の感染予防策」の章で、まず真っ先に取り組むべき対策として挙げられているのは、手指衛生だ。
普段の暮らしの中でする手洗いは、自分が「感染しない」ためのものだが、介護施設で介護を行う人に求められるのは、入居者に「感染させない」こと。
そこで介護施設での手指衛生で大事なのは、方法・量・タイミングなのだという。
「手指消毒」か「手洗い」か、どのようなタイミングで行うべきかなど、直感的に理解しやすい解説がされている。
「感染症発生時の拡大防止策」の章では、介護施設ならではの高齢者に多い感染症をピックアップ。
イラストもふんだんに使われ、目で見てわかりやすい構成だ。
特にノロウイルス感染症については、多くのページを使って詳しく解説。
たとえば居室の清掃については、手順に沿ってそれぞれイラスト付きで説明しているので、非常に実践的で心強い。
清拭用のペーパータオル、次亜塩素酸ナトリウム、ビニール袋を用意。
↓
手袋、マスク、ビニールエプロンを着用。
↓(中略)
居室内で手袋、マスク、ビニールエプロンを外し、ビニール袋に入れる。
↓
石鹸と水道水で手洗いする。
専門用語などの難しい言葉はできるだけ使わず、わかりやすく、介護現場で活用しやすい、をモットーに書かれていながら、介護施設でやるべき対策についてはもれなく網羅している。
介護施設の感染対策のために、現場ですぐに役に立つ入門書として十分な一冊と言えよう。
著者プロフィール
四宮 聡(しのみや・さとし)さん
箕面市立病院 チーム医療推進部 ICT(感染対策チーム)担当副部長。感染管理認定看護師。2007年感染管理認定看護師資格を取得。2013年東京医療保健大学大学院医療保健学研究科感染制御学を修了(修士)。2014年より現職。日本環境感染学会、日本医療機器学会、日本手術医学会、日本静脈経腸栄養学会、日本看護管理学会、米国感染管理専門家協会に所属。兵庫医科大学医療人育成センター認定看護師教育課程非常勤講師。