■書名:介護ストレスをゼロにする10の思考法
■著者:深澤 昭彦
■発行元:幻冬舎
■発行年月:2015年11月27日
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介護と向き合う気持ちを変えれば「介護ストレス」はなくなる! その思考法とは!?
厚生労働省の調査によると、介護を行っている約6割の方が「悩みやストレスがある」と回答しているという。悩みは実にさまざま。家庭で介護をしている場合は、通院や薬などに伴う出費などお金の問題、介護のために仕事を辞めざるを得なかった介護離職などの問題がある。
施設で働く介護スタッフも同様に、多くの悩みやストレスを抱えているのではないだろうか。利用者との相性やコミュニケーションなどから来る悩みもあれば、自らのスキル不足、職場の環境から来る悩みもあるだろう。
利用者は十人十色。病気の症状も違えば、性格や、家庭環境もさまざまだ。コミュニュケーションがとりにくい人もいれば、介護スタッフに対して「とげを含む言葉」を発する人もいる。たくさんの利用者から同時に介助を頼まれることもあれば、無理なお願いをされることもある。
職業的な訓練を積んでいる介護スタッフは、そこにうまく対応するのが仕事である。…といえど、頭では理解していても、忙しいと、ついイライラしたり、ストレスをためてしまうのではないだろうか。
家庭においては、家族の介護が続くことでうつ病を発症する人は、23%にもなるという(厚生労働省調査)。1対1で行う家庭の介護とは状況が異なるとはいえ、介護施設でも、スタッフのメンタル面におけるフォローは重要だと考えられる。
本書の著者の深澤さんは「介護する側が自分のメンタルを適切にコントロールするだけで、介護のストレスはゼロになる」と語っている。
<今やすべての人が人生の通過点として、「介護する」「介護される」を考えなければならない時代です。特に、介護する期間を、ただ疲弊して消耗するだけに終わらせないためにも、介護についてよく知り、介護生活との付き合い方、心の持ちようについて備えておく必要があるといえるでしょう>
本書では、医療と介護の現場で実践を積み重ねてきた深澤さんが、これまでの知識と経験をもとに編み出した、介護の憂鬱(ゆううつ)を解消する「思考法」を紹介している。
本書で紹介している思考法は10種類。
介護をする側が目の前の状況を自分中心に考え、思い通りにならないことにイライラを感じることが多いことから「治ってもらおうと考えない」ことを最初に挙げている。
そのほかに紹介されている考え方は下記のようなものだ。
●「非効率的でもかまわない」という前提に立つ
●親の人生をねぎらうための介護と考える
●要介護者の心を察することを目指す
●積極的に"手抜き"をする
●要介護者の"その人らしさ"を尊重し、一緒に考える
●介護を"家族との関係"を再構築するチャンスと捉える
●サービスを活用するなら、リスクを了承する
●要介護者の話を傾聴する意識を持つ
●"死への恐怖"を理解する
「親」「家族との関連性」などが挙げられているが、介護施設で働くスタッフにも共通した内容である。
「その人らしさを尊重する」「要介護者の心を察することを目指す」は、仕事の初心にかえるひとつのきっかけになると思われる。
また、「積極的に手抜きをする」「非効率的でもかまわないという前提に立つ」という考え方は、介護を行う側の気持ちを楽にするのに有効であるように感じる。自分が取り入れやすいものから始め、心がほぐれていくのを感じたら、次の思考法にうつるのも、ひとつの方法ではないだろうか。
利用者とうまくつきあい、そこから喜びや楽しみ、やりがいを見出せれば、お互いにとって、かけがえのない人生の一部となる。日々の介護に疲れを感じている人はもちろん、新たな視点で利用者と向き合いたいと考えている人にもおすすめの本である。
<松原圭子>
著者プロフィール
深澤 昭彦(ふかさわ・あきひこ)さん
介護支援専門員、看護師、カウンセラー、心療回想士、准看護師という5つの資格を持つ。病院に勤務後、東京八王子にデイサービスケアセンターの大正舎を設立し代表取締役社長に就任。看護師としての経験とカウンセラーとしての専門知識を生かし、「医療」と「心理」の2面からアプローチする介護を実践している。