■書名:いつも一緒! 100歳じいちゃんとハナ 孫娘の泣き笑い介護日記
■著者:まるこ
■発行元:辰巳出版
■発行年月:2014年10月5日
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人生に寄り添う介護のあり方が見えてくる、愛情いっぱいの介護日記
本書は、100歳の“じいちゃん”を介護する孫娘「まるこさん」が、祖父と愛犬のハナをめぐる日常をユーモラスに書き綴った介護日記だ。じいちゃんとハナの微笑ましい写真が散りばめられている他、デイケアのスタッフや訪問看護師のコメント、料理写真など、バラエティに富んだ内容なので、楽しく読み進めることができる。
<じいちゃん、ついに目標だった100歳に到達しました。これからも、遠くよりも近くの1日1日、変わらない毎日が大切だと思います。なので今日悔いのないよう、心穏やかにやさしい介護をしてあげたいと思います。
と、これはあくまで理想です。きっとじいちゃんはこれから認知症がもっとひどくなり、介護の壁にぶつかって、私はイライラしたり落ち込んだりのくり返しでしょう。>
慣れない下の世話にとまどったり、ワガママ放題のじいちゃんとバトルを繰り返したり。ときには、夜中に突然じいちゃんが大声で歌い出し、「怒鳴りつけたい気持ちをグッとおさえ」たものの「いつか爆発しそうで怖い」と心情を吐露する著者。
しかし、下の世話や、自由に外出する時間もない缶詰生活について、著者は「これが介護の醍醐味ってやつでしょうか」と書く。そのポジティブな姿勢があるから、暗くツライだけの介護にはならない。
たとえば、著者のストレス発散法のひとつが、じいちゃんの服をインターネットで買うこと。「お年寄り=暗い色、シックな装いというのは、本人にも介護している側もつまらない」と、赤や黄色のビビッドカラーや、チェックやストライプの柄物を購入。色とりどりのアイテムを取り入れたじいちゃんのファッションは、「かっこいい」と評判だ。
担当のケアマネが次のようにコメントしている。
<まるこさんはじいちゃんのためによいと思うことは、積極的にすぐに取り入れていますね。これが若い孫介護の一番のメリットといえます。(中略)老々介護が一般的な中で、とても珍しいケースですが、これからのモデルケースになると考えています。>
本書は介護日記であるが、介護そのものにスポットを当てたものではない。あくまでも主人公は、100歳の祖父とハナなのだ。
だから、要介護になってからのじいちゃんだけでなく、彼が生まれたときからの100年の歴史に目を向ける。親戚に預けられて育った幼少期。その経験から、迷惑をかけることが嫌いで、人に優しいじいちゃん。ばあちゃんと出会った青春時代、海軍時代、復員後の開拓時代…。90歳過ぎまでバイクを乗り回し、趣味は魚釣り。甘い物が大好きで、巨人の大ファン…。
本書に溢れているのは、一人の一生を見つめる優しさと愛情だ。血の繋がった孫娘だからこその視線でもあるが、相手の人生を知り、尊重し、寄り添うことは、介護をするときに最も大事なこと。そのことが、しみじみと伝わってくる。
もうひとつ忘れてはいけないのが、じいちゃんとマルチーズのハナの関係。もちろん実際に介護をしているのは著者なのだが、じいちゃんとハナはお互いになくてはならない存在で、仲良く支え合う。老老介護ならぬ、老・老犬介護なのだ。
<じいちゃんは自分の歳を自覚していないので、いつも自分よりハナのことが心配で気になって仕方がありません。ハナも自分を小型犬と思っていないので、じいちゃんを守っているという自信にあふれています。>
残念ながら自分のことがほとんどできない“じいちゃん”だが、ハナのお世話はする。
<誰かのお世話ができる
誰かの為に役立ってるってことは
生きるのに大切なことなんじゃないかと思います>
ほんわかとした内容の中に、心に響く言葉がきらりと光る一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
まるこ さん
1970年生まれ。2009年、祖父の介護などのため、夫とともに東京からUターンし、宮崎県で暮らす。介護生活の様子をブログ『孫夫婦とマルチーズとじいちゃんの日常』に綴っている。なお、本書の主人公であるじいちゃんとハナは、2014年に相次いでこの世を去っている。