■書名:鳥居りんこの親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ
■著者:鳥居りんこ
■発行:ダイヤモンド社
■発行年月:2015年5月7日
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介護初心者の著者が直面した親の在宅介護の大変さ・問題点とは?
本書は、実母の介護に直面し、初めて介護サービスの利用を開始した、エッセイスト・鳥居りんこさんの介護サービス体験記である。
「介護保険制度」というものがあることすら知らなかった鳥居さんが、手探りで「要介護・要支援」の申請に挑戦。ケアマネジャーという存在を知り、ケアプランを作成してもらい、念願の「自宅に転倒予防のための手すり」を介護保険制度を利用して付けてもらうことに成功する。
さらに症状の悪化に伴い、実母を老人ホームへ入れることも検討。漠然とした老人ホームのイメージしかなかった鳥居さんが、右往左往しながら施設の見学を重ね、「特養」「老健」「療養病床」といった介護保険の施設や、有料老人ホームなどについて知識を蓄えていく。
介護や支援が必要な家族を抱える人は、多かれ少なかれ鳥居さんと同じような経緯をたどり、介護サービスの利用を開始するのではないだろうか。本書では、「キョタク(居宅)」「ホーカツ(包括)」という言葉を始めて聞き、戸惑いを感じた鳥居さんのエピソードも収められている。介護従事者にとっては、当たり前のような言葉や出来事も、介護に初めて直面する家族にはわからないことばかり。読みすすむうち、介護サービスに関する利用者の家族の不安な思いが実感できるはずだ。
また、高齢者が増加し続ける現在、「施設での介護」から、自宅で訪問看護やヘルパーなどの支援を受けて過ごす「在宅介護」へとシフトしつつある。
鳥居さんは姉とともに独居している実母の介護を行っているが、本書では「在宅介護の難しさ」についても言及。在宅介護というと、住み慣れた自宅で、家族とともに穏やかに最期を過ごすというイメージがあるかもしれない。しかし、24時間の介護で精神的・身体的に疲弊するし、介護離職と背中合わせの状況になったりと、支える家族の負担は多い。
被介護者の年齢や性格などさまざまな要因もあるかもしれないが、きれいごとばかりいっていられない在宅介護の問題点を、赤裸々につづっているのが興味深い。このような実情があるということを知っていれば、介護職にとって、家族との対応や相談時に、大きなプラスになるのではないだろうか。
本書では鳥居さんが実体験に基づいた「良いケアマネの見分け方」「良いケアマネの探し方」も掲載。対応がよくなかったケアマネにあたった知人の悲劇エピソードも紹介している。
また、特養や老健、老人ホーム、グループホームなどの介護施設についても、表組で特徴を分かりやすく解説。支援・介護度に適した施設がわかるチャート式の図も掲載されている。介護の仕事を始めてまだ間もない人や、各施設の差がいまいちわからない利用者の家族でもわかりやすいのではないだろうか。
本書の中で鳥居さんは「福祉は自己申告。やった人だけ得をする仕組み」「待ってるだけでは、何も始まらないのが介護サービス」と語っている。動けばよいケアマネに出会う確率は高くなるし、よい介護施設やサービスの情報も手に入る。
<介護ははっきりいって情報戦だ。自分で抱え込まずに、どう介護チームを作っていくかで明暗が分かれる。市役所、包括、ケアマネ、ドクター、看護師、病院の相談室、ヘルパー、デイサービスの人たち、すべての近場にいるプロを頼って、窮状を話そう。まずはそこからだ。助けは必ず、来る!>
良い介護のためには、受け身ではなく攻める。その奮闘ぶりに勇気づけられる人も多いはずだ。
著者プロフィール
鳥居りんこ(とりい・りんこ)さん
エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー。2003年、長男との中学受験体験をつづった『偏差値30からの中学受験合格記』(学研)がベストセラーとなる。子育てや受験、就活に悩む母親たちに向けて執筆・講演活動など行うほか、近年は介護問題についても、実体験を踏まえたアドバイスを行っている。