シナプソロジーは、子どもからお年寄りまで楽しめ、座ったままで出来るプログラムもあるので、体力レベルを問わず行えます。運動・知的刺激・社会交流により、脳を刺激し活性化。認知症予防や、健康増進に役立つことも期待される、高齢者にもぴったりなプログラムです。介護事業所や施設で取り入れているところも増えています。
このコーナーでは、「あらら、間違って正解!」「おやおや、戸惑って大正解!」と楽しめる、魅力満点のシナプソロジーをご紹介!シナプソロジーインストラクターのふーちゃんこと、介護福祉士の山﨑史香さんに、介護施設や、デイサービスなどで楽しめるプログラムを教えてもらいます。
軽度認知症、麻痺のある人も楽しめる「たい・タコ」をやってみよう
みなさん、こんにちは!今日も元気にシナプソロジーインストラクターのふーちゃんです。
めっきり、冷え込む季節になりましたね。そこで、本題に入る前に、冷えや病気予防になるばーちゃんの知恵袋をご紹介!生姜はそのままだと身体を冷やしてしまいますが、熱を加えると身体を芯から温めぽかぽかにしてくれます。身体の中から冷えを防いでくれるのでおすすめです。
前回に引き続き、
「たい・タコ」というプログラムをご紹介します。前回は元気なお年寄り向けでしたが、今回は
軽度認知症、麻痺のある人も楽しめるアレンジバージョンをお伝えします。
【1】まず、以下の基本動作を覚えましょう!
はじめに、たい・タコどちらの役をするかペアの方と話合いで決めます。
まずは右手で、相手と握手する形を作ります。しかし手は握らずに、すぐ握れる距離で指2本分くらいの間をあけます
指示者がたい・タコのどちらかを言います。
呼ばれた方は相手の手を握ります。呼ばれなかった方は捕まらないように横に逃げます。
イラストは、タコ役の人が呼ばれたときの場合です。
軽度認知がある方への指導ポイント
社交的な方の場合は、ペアを組むことに大きな問題はないでしょう。そうでない場合は、できるだけその方がペアを組みたいと思える相手を選ぶと良いですね。状況によっては、専門職のスタッフがペアになって相手役をやりましょう。このプログラムは二人組で行うので、相手との相性を気にする必要があります。バックグランドから、同じ地域、生まれ、出身校、職業など共通点のある方同士をペアにしたり、その後の生活の中でのコミュニケーションが生まれるような配置を考え、環境設定はしっかり行った上で進めていきましょう。
はじめのうちは、スタッフの動作をすべてマネしてしまう場合があるかもしれません。サポートに他のスタッフに入ってもらい、基本動作を覚えてもらいましょう。参加される方の中に認知症の方が多くいる場合はサポートのスタッフを増やし、こまめに声かけをしながら一緒にやってみてくださいね。
また、説明するときは難しい言葉はなるべく使わずに、理解しやすい言葉で伝えましょう。たとえば、「脳が活性化する」ではなく、「頭の回転が良くなる」「頭が元気になる」「頭の血の巡りが良くなる」など。
中には耳の遠い方や、早口だと聞こえない方もいるので、指示をする皆さんは、ゆっくりと話すことを意識しながら行いましょう。また、いきなプログラムを進めるのではなく、プログラムに入る前に、季節や、思い出を引き出す回想法で場を和ませることも大切ですね。参加される皆さんの心をほぐしてから行うと進行が進めやすいと思います。
【2】基本の動作を覚えたら、みんなで実践してみよう!
動作を覚えたら、いよいよシナプソロジーがスタート!
指示者は二人組の良さを発揮できるように、声がけのタイミングも重要です。
●指示者の声がけ
「まずはパートナーの方の顔を見て、笑顔でご挨拶と握手をしましょう。
では、たい・タコ役を相談して決めますよ。二人で話し合って決めてください。
はい。どうぞ。」
※1分ほど、たい・タコ役が決まるまで待ちましょう。
「はい。決まりましたか?ではタコ役の方は手を上げてください。次に、たい役の方。」
※ここで手を上げる動作を加えて、自分が何役か認識してもらいます。
「では、先ほど握手をしましたね。
今度は握手をすぐ出来る距離で指2本分くらい開けて、握手の状態を作ります。」
「今から私が、たいとタコのどちらかを言います。
呼ばれた方は相手の手を握ります。呼ばれなかった方は横に逃げます。
お隣の方とぶつからないように距離をとってくださいね。」
「ではいきますよ。
たーたーたーたーたーたーた・・・タコ!!」
※たい、タコのどちらも「た」の付く言葉ですので、指示者は少しためてから言いましょう。これが、高齢者の聞き分けて反応する聴覚反応を促します。
握れた方、逃げられた方、どっちも逃げたり、あべこべになっちゃった方など、とても盛り上がる反応をされると思います。そうすると、盛り上がりすぎて次の指示が出せなくなることもあります。がやがやし過ぎていると指示が伝わらず、混乱させてしまう可能性があるので、指示者は間を置いてから話すようにしましょう。
少し盛り上がりが落ち着いたところで、振り返りの話をします。「捕まえられましたか?逃げ切れましたか?」と声を掛けながら、どんな気持ちだったか、悔しい、楽しい、面白いなどの感情の抽出をしましょう。そこはたっぷり時間をかけて、ペアの方同士の信頼関係を築けるように誘導します。その後は、基本動作を3回ほど繰り返してからの、スパイスアップに移ります。
【3】新しい刺激をチャージ!スパイスアップ 初級編
次はスパイスアップ(新しい変化)です。
今度は、たい・タコを左手で行います。
●指示者の声がけ
「今度は左手で行います。では、準備をしてください。」
※基本動作同様に、次の動作の指示を出すときは周りの状況をしっかり把握し、落ち着いてから次に移りましょう。
【4】新しい刺激をチャージ!スパイスアップ 中級編
右手に戻して今度は、「たい」・「タコ」の他に「た」の付く別の言葉を言ったとき動かない。
●指示者の声がけ
「では、スパイスアップ。今度は「たい」「タコ」の他に「た」の付く言葉を増やします。たい・タコ以外の他の言葉のときは握っても、逃げてもいけません。握手前のまま動きませんよ。」
(「た」の付く言葉の例)
・タイヤ、たまご、たいこ、たら、たんぼ、たらこ、などなど…
麻痺や体を動かしにくい方へのスパイスアップのアレンジ
スパイスアップ初級編は、中級編のように「た」の付く別の言葉で聴覚刺激を加えていきます「動く方の手」で行ってみましょう。
スパイスアップ中級編として、聴覚刺激の変化を手拍子に変えます。タコの人は、手拍子2回、タイの人は手拍子3回の音の回数の変化で聞き分けて反応してもらいましょう。手拍子でなくても、タンバリンやカスタネット、鈴など楽器を使っても良いですね。
※両手が動かないと出来ない!と決めつけているのは介護者側の偏った見方の場合があります。片手では参加出来ないだろうと、参加者メンバーに入れないと言う選択では無く、その方の出来る事にフォーカスしてみてくださいね。中には片麻痺だからと参加を諦めている方もいると思います。その方に沿った声がけをしながら、麻痺があっても脳を活性化できることを伝えてください。
ふーちゃんのワンポイントアドバイス
このプログラムは、海の生き物 たいとタコ役に分かれて、同じ「た」ではじまる言葉を聞き分ける聴覚刺激、聞いて反応する触覚刺激に働きかけるプログラムです。「おぉ!捕まって水揚げされちゃいましたね」、「タコさんお寿司にされてしまいますね」など盛り上がる言葉を付け加えるのも良いでしょう。
聴覚刺激の変化ですので、少し間をためたりして、「では、私の美声に耳を傾けてくださいよ!たーたーたーたー・・・」と言うように強弱をつけながらプログラムに入ると適度な緊張感と楽しさがでます。イラストは分かりやすいように、タコとたいが頭に乗っていますがあくまでもイメージですよ。指示者は二人組の良さを発揮できるよう、声がけのタイミングも重要です。利き手が左手の方も中にはいらっしゃいますので、指示者はしっかり把握した上で指示を行うと、ご本人や、周りの混乱を招かず出来ると思いますので、声がけの際は、「箸を持つ方です。」など分かりやすい表現をしてみましょう。異なる動作を同時に行うこと、そして声を出して身体を動かし、新しい刺激の変化に反応することで脳はイキイキします。片麻痺でも、認知症があったとしても、それを1つの個性と捉えて、指導者は参加される方が如何に楽しみながらできるかを考えて行ってみてくださいね。
※説明進行していく中で、初めてで、緊張したり、上手く笑いが取れなかったりすることもあるでしょう!ですが、それも楽しむ心が大切です。心折れてはいけませんよ〜。プログラム、と聞くとその通り進行しなければいけないという気持ちになってしまいますが、全て遂行することが目的ではありません。笑いながら、脳が混乱して間違える事を「みんなで楽しむ事」が大切です。慣れてきたら、「脳の活性化プログラムである事」を意識して、行っていけば良いと思います。
一度、スタッフ同士でやって難易度を確認してから、参加者のレベルに合わせてアレンジしてみましょう。
なお、軽度認知症には個人差があります。初めてプログラムを進行する場合は、指示者のサポート役にもう1人加え、2人で進行できるとベター。様子を見て、フォローしながら進めていけるとよいと思います。
次週は、新しいプログラムを紹介します。
「たい・たこ」を動画で見る
<シナプソロジーについて>
→シナプソロジーの特徴と効果とは?
→「たい・タコ」元気なお年寄り向けのアレンジはこちら
プロフィール
ふーちゃん こと 山崎史香(やまざき・ふみか)
キャリア11年の介護福祉士。現場で介護職員として働くかたわら、子供や若者達が触れやすい介護の新しい入り口作りを目指し、「介護イノベーションART」など施設を離れた活動も積極的に行う。地域、現場から発信するスタイルの介護福祉士として、注目の存在。電子書籍絵本
『しわのようせい』の作者でもある。
そのほかの活動として主なものは、寝たきりの方の見ている白い天井の景色をARTで変える「花咲かじーさんプロジェクト」、子供達へのシワ物語り「介護授業」、4度目のハタチを謳歌する為の「介護予防サロン」を開催。今までの活動が、目に止まり、宮城県仙台市のケアヒーローに選ばれる。また、福祉事業、介護の魅力を伝えるプロモーション、パンフレット、雑誌等にも出演している。
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