■書名:出雲リハ病院式 認知症予防ドリル150
■編著者:三谷 俊史
■出版社:学研プラス
■発行年月:2016年3月
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介護施設でも実践できる!飽きずに楽しく認知機能の改善をめざす
出雲市民リハビリテーション病院は、全国有数の高齢化県・島根県における唯一のリハビリテーション専門病院。本書は、同病院で独自に開発された認知機能改善のためのドリルだ。
本書の一番の特長は、多種多様な問題が用意されていることだろう。
従来からよく使われる計算問題やぬり絵などの課題だけでは、一定の効果はあっても、単調でつまらなくなってしまう。
患者さんに、飽きずに長く続けて取り組んでもらうためには、本書のようなバリエーション豊富なドリルが必要なのだ。
本書で紹介されている問題は、次の15種類。
1.計算問題 2.日本語穴うめ 3.道具の使い方
4.連想課題 5.文字えらび 6.間違いさがし
7.課題つきめいろ 8.季節のものごと 9.ものごとの手順
10.異食防止 11.遅延再生 12.変則じゃんけん
13.表情の認識 14.危険予測 15.思い出ぬりえ
内容的にも、高齢者の日常生活を題材にした問題が多く、飽きずに興味を持続してもらうための工夫がなされている。
たとえば、「危険予測」の問題では、鍋を火にかけたまま長電話をしている絵や、オレオレ詐欺の電話を受けるイラストが掲載されている。それを見て、起こりうる危険を予測させるのだ。
他にも、食べられるものと食べられないものを区別する「異食防止」といった問題もある。
いずれも、高齢者の日常生活への注意喚起に結び付く内容となっている。
このような豊富な種類と内容の問題が全部で150シート用意されている。
5シートを1日分として30日分にまとめてあり、さまざまな種類の問題があらかじめ組み合わせてあるので、そのまま介護の現場で導入しやすい形になっている。
実際に出雲市民リハビリテーション病院では、このドリルを入院患者さんに1カ月実施してもらったところ、その結果70%以上の人に認知機能の改善効果がみられたという。
こうした実証結果も、本書に取り組むモチベーションになることだろう。
また、課題シートの欄外の「今日のひと言」もおもしろい。
「福引でペア旅行のチケットが当たりました。だれと行きたいですか?」
「いちばん好きな歌は何ですか?」
「高校のときの自分に何と言ってあげたいですか?」
のように、楽しい会話を引き出せそうな質問が多く、会話のきっかけとしても重宝するはずだ。
患者さんにとっては、考えながら話をするトレーニングになることは言うまでもない。
出雲市民リハビリテーション病院では、このドリルの臨床試験を通して、多くの患者さんの変化を目にしているそうだ。
<重度の認知症のためドリルに取り組めそうになかった患者さんが、かけ算をスラスラと解かれ、「昔、親がちゃんと学校に通わせてくれたからね。兄弟で学校に行かせてもらえたのは自分だけだったから一生懸命勉強した。」と嬉しそうに回想されたことに驚き、あらためて高齢者の残された潜在能力を発見し、それを伸ばすことの大切さを痛感しました。>
このドリルは、認知機能の向上を約束するものではないが、高齢者にとって好ましい刺激となる可能性は大きそうだ。
介護の現場で取り組んでみる価値のある一冊だろう。
編著者プロフィール
三谷 俊史(みたに・としふみ)さん
出雲医療生活協同組合出雲市民リハビリテーション病院リハビリテーション科医師。日本リハビリテーション医学会専門医・指導医、医学博士。1998年島根医科大学医学部卒業。放射線科、生化学講座を経て、2007年より現所属。